コラム

トランプ政権を支える陰謀論「QAnon」とは何か

2018年08月06日(月)15時08分

QAnonの支持者たち

しかし、それでもQAnon支持者は増えている。

QAnonの主張を支持者が解説したYouTube動画のなかには20万回以上に視聴されているものもある。

最近では、Qの主張を行動に移す例も出始めた。4月には、数十人のQAnon支持者がOIGを監督する司法省の前で、民主党関係者の犯罪行為を明らかにするよう求めるデモを行った。

また、Qがアリゾナ州ツーソンの砂漠地帯に児童買春と人身取引の巣窟があると書いたので、実際に探しに行った支持者もいる。ディープな取材に定評のあるVICE MEDIAによると、ツーソン在住のQAnon支持者らが5月末に砂漠を捜索し、ホームレスの小屋にあったバービー人形、革ヒモ、ポルノ雑誌だけを理由にこれを人身取引の巣窟と決めつけ、アリゾナ州当局に非常事態宣言を出すよう求める騒ぎとなった。

Qのメッセージは犯罪すら招いている。6月、アリゾナ州とネバダ州の州境にあるフーバーダムのそばのハイウェイを、銃で武装した男が「OIGの報告書を公開せよ」と要求して封鎖。QAnon支持者のこの男は、テロリストとして逮捕された。

7月末にはQがネット上、反トランプ派の著名な弁護士マイケル・アベナッティ氏の事務所の前に立つ人影の写真を投稿した。アベナッティ氏に対する脅迫もとみられている。

17の意味

隠然と広がるこの動きの中心にいるQとは何者か。それは定かでないものの、Qというハンドルネームは本名の頭文字ではないとみられる。

Qはアルファベット17番目の文字だが、トランプ氏に関しても17にまつわるエピソードは少なくない。

例えば、トランプ氏は大統領になる以前、首都ワシントンに17回足を運んだといわれる。また、4月に全米選手権を制覇したアラバマ大学アメリカンフットボール部のメンバーがホワイトハウスを表敬訪問した際、トランプ氏に贈られたユニフォームの背番号が17だった。

もちろん、これらは偶然にすぎないだろうが、トランプ支持者にとっては17が「真実のサイン」、「愛国者の番号」になっている。Qを名乗ることは、「腐ったエリートと対決する」トランプ氏との一体性を暗示することになる。つまり、Qは17という数字に一種の神秘的な意味合いをもたせることで、支持者をひきつけているのだ。

これを意識してか、最近ではトランプ氏自身も17を強調することがある。8月1日、トランプ氏はツイッターでムラー特別検察官と民主党による調査を「魔女狩り」と批判したが、それまで「13人の怒れる民主党議員」と表現していた部分を「17人の怒れる民主党議員」に変更した。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

ニュース速報

ワールド

NY州、コロナワクチン独自審査へ 知事「政治化巡り

ビジネス

米株反発、ハイテク株に買い 好調な住宅指標などで

ビジネス

ドル小幅安、株高が圧迫 コロナ経済対策巡る期待で=

ワールド

スペイン、コロナ感染者70万人突破 マドリード中心

MAGAZINE

特集:コロナで世界に貢献した グッドカンパニー50

2020-9・29号(9/23発売)

新型コロナで企業フィランソロピーが本格化──利益も上げ、世界を救うグッドカンパニー50社を紹介

人気ランキング

  • 1

    尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮想「東シナ海戦争」の結末

  • 2

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに動画が拡散

  • 3

    美貌の女性解説員を破滅させた、金正恩「拷問部隊」の卑劣な手口

  • 4

    台湾有事を想定した動画を中国軍が公開

  • 5

    「習vs.李の権力闘争という夢物語」の夢物語

  • 6

    日本人はたぶん知らない、日本の定期券がちょっと残…

  • 7

    フランスから見ると驚愕の域、日本の鉄道のあり得な…

  • 8

    中国人に同化されゆく内モンゴルの問題は内政問題に…

  • 9

    『わかりやすさの罪』から抜け落ちている「わかりや…

  • 10

    Siriが「テロリストは警官」と返答、アップルに怒り…

  • 1

    安倍首相の辞任で分かった、人間に優しくない国ニッポン

  • 2

    中国人民解放軍、グアムの米空軍基地標的とみられる模擬攻撃の動画公開

  • 3

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに動画が拡散

  • 4

    尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮…

  • 5

    権威なき少数民族にはここまで残酷になれる、中国の…

  • 6

    拡張主義・中国の「武力」を4カ国連携で封じ込めよ

  • 7

    どこが人権国家? オーストラリア政府がコロナ禍で…

  • 8

    美貌の女性解説員を破滅させた、金正恩「拷問部隊」…

  • 9

    2020年ドイツ人が最も恐れるのは......コロナではな…

  • 10

    なぜ日本は「昭和」のままなのか 遅すぎた菅義偉首…

  • 1

    安倍首相の辞任で分かった、人間に優しくない国ニッポン

  • 2

    中国・三峡ダムに過去最大の水量流入、いまダムはどうなっている?

  • 3

    中国人民解放軍、グアムの米空軍基地標的とみられる模擬攻撃の動画公開

  • 4

    【動画】タランチュラが鳥を頭から食べる衝撃映像と…

  • 5

    反日デモへつながった尖閣沖事件から10年 「特攻漁船…

  • 6

    1件40円、すべて「自己責任」のメーター検針員をク…

  • 7

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに…

  • 8

    米中新冷戦でアメリカに勝ち目はない

  • 9

    アラスカ漁船がロシア艦隊と鉢合わせ、米軍機がロシ…

  • 10

    太陽の黒点のクローズアップ 最新高解像度画像が公…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!