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冴えない石破政権...多くの家計にとっては事実上の増税
2月23日に行われたドイツの総選挙では、事前の世論調査どおり、メルツ氏率いるCDU・CSU(キリスト教民主・社会同盟)が最大議席を確保して、SPD(社会民主党)との連立協議を経て新政権が発足する見通しである。
CDU、SPDともに減税や家計への給付に加えて、軍事費拡大が必要との認識を示している。債務拡大ブレーキを定めた憲法の改正までには至らなくても、ドイツでは景気刺激的な財政政策が発動されて、経済成長率は高まると予想される。経済政策転換への期待が、欧州株市場の上昇を支えるだろう。
欧州株と対照的に日本株は、もともと割高感が強かった米国株と比べても、2025年初来のパフォーマンスは冴えない。石破政権は、総選挙で躍進した国民民主党が主張する減税政策を事実上拒否して、1兆円という極めて小規模の減税政策で予算案を作り、日本維新の会と合意に至った。
ほぼ同規模の防衛増税が2026年から実現するのだから、日本の財政政策は経済成長を押し上げるには至らない。そして、ブラケットクリープ(*)対応がほぼ実現しないのだから、多くの家計にとっては事実上の増税が行われている状況は変わらない。
*インフレにより賃金が上昇しても所得税率がそれ以上の比率で上がること。
さらに、2024年夏場から続く日本銀行の「引き締め政策」である利上げが継続しそうである。石破政権では、筆者が予想したとおりマクロ安定化政策が、十分機能することはないのだろう。夏場に控える参院選挙を前に政局が動かずに石破政権が続く限り、日本株の停滞は長期化すると考えている。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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