コラム

薄っぺらで気持ち悪い在日タブーを粉砕した映画『月はどっちに出ている』の功績

2021年11月25日(木)17時55分

月はどっちに出ている。それは決められない。どこに立つかで方位は変わる。忠男が恋するフィリピーナ。同僚の出稼ぎイラン人。さまざまな国籍を持つ人が日本に暮らしている。大切なことは、自らの個を意識しながら、相手を個として見つめること。

本作に出演した後に『新・居酒屋ゆうれい』『おくりびと』などに出演したウォンシル(朱源実[チュ・ウォンシル])さんは、2011年に妻と娘2人を残して胃癌で逝去した。

この時期はたまたま疎遠だった。だから後で知った。悲しいというより悔しい。今も笑顔を忘れない。たぶんこれからもずっと。

magmori211125_2.jpg『月はどっちに出ている』(1993年)
監督/崔洋一
出演/岸谷五朗、ルビー・モレノ、絵沢萠子、小木茂光

<本誌2021年11月30日号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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