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K-POP史に残るヒットメイカーとなったTEDDY 成功のカギは「アジア的な感性を忘れない音作り」
BLACKPINKで独自のサウンドに挑戦
TEDDYがプロデュースや作詞・作曲の面で大きく飛躍したのは、2000年代後半以降のBIGBANGと2NE1、および両グループのメンバーたちのソロ作であり、さらに世界的な評価を得られたのはBLACKPINKの一連のヒットソングである。この頃は"自分だけが作れるダンスミュージックとは何か"を意識したものが目立つが、特にBLACKPINKの楽曲では大胆なリズムチェンジやブレイクを多用して他にはないサウンドにチャレンジしているのが面白い。
最も顕著な例が「Kill This Love」(2019年)と「How You Like That」(2020年)である。リズムのない箇所が随所に挿入され、ときには鼓笛隊を思わせるスネアの音や中近東風のアレンジなどを用いて、聴き手が容易に踊ることを許さない。さらに注目すべきなのは、サビに入る直前にバックの音数を最低限にしてキメのワードを入れる技だ。このあたりは韓国の伝統音楽パンソリの間の取り方に近いものがある。
異国の香りが漂うサウンド
以上のように王道のダンスミュージックから若干外れているTEDDYの作風が、なぜこれほどまでに受けるのか。その理由を断定するのは非常に難しいが、世界中でここしばらく音楽界のトレンドとなっている「異国の香りが漂うサウンド」と合致したのは間違いないはずだ。彼の持ち味は韓国人にとっては自国の風土に合った親しみやすさがあり、それ以外の国の人が聴けばフレッシュに感じられるといったところだろうか。
「K-POPはどんな音楽か?」と尋ねられると、私は「アジアの美意識がにじむファッションとメイク、ヒップホップ的な感性を生かしたキレのいいヴォーカル&ハーモニー、カルグンム(刀群舞)と呼ばれる一糸乱れぬダンスなどがK-POPであり、特定のサウンドを指すものではない」という回答をその都度してきた。だが最近は「TEDDYの作品こそがK-POPらしいサウンドなのではないか」と思うときもある。とにもかくにも彼の生み出す楽曲がヒットチャートを賑わす状況はまだ続きそうだ。
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