コラム

GDP統計の修正で浮かび上がった中国の南北問題

2020年07月10日(金)16時30分

要するに東北部はただでさえ経済が低迷しているのに、そこへ退職者を養う負担が重くのしかかるという悪循環に陥っている。若い世代が機会を求めて南方へさら移住してしまうと退職者を養う負担がますます重くなる。

東北3省におけるこうした貧困の悪循環から抜け出すには、広東省や福建省に成長をもたらした経済改革の風を東北部にももっと吹かせることが必要である。また、東北部の退職者を養う負担が東北部の現役労働者にばかり重くのしかかる問題は速やかに是正しなければならない。

ところで、「中国の南北問題」はグローバルな南北問題、すなわち北(欧米)が豊かで南(南アジアやアフリカ)が貧しいという構図とは真逆である。中国の場合、広東省が香港に隣接しているとか、最初の4つの経済特区が広東省と福建省に作られたとか、西側資本主義の風が南から吹いてくる構造になっていたことの影響が大きいが、そればかりでなく、企業家精神も南の方が一般に強いように感じられる。

<参考文献>
澤田ゆかり[2020]「福祉と経済」(上村泰裕編『新 世界の社会福祉 第7巻 東アジア』旬報社)

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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