コラム

中国大手32社が「不審死&経営難」海南航空と同じ運命をたどる!?

2018年08月14日(火)13時00分

口封じのために殺されたのか

この1年間にわたる「海南航空狂騒曲」の果てに起きたのが、王健会長の死である。この流れを見れば、事故死という発表を信じるほうが難しい。8月9日にはフランスの地方紙「ル・プロヴァンス」が王健の死には謎が残ると報道。一度は事故死と断定した地元警察が再調査を始めたと報じている。

実は死の1カ月前には王健の死を予感させる出来事があった。郭文貴も定期的に出演するユーチューブ番組「路徳訪談」での一幕だ。匿名のコメンテーター、大衛小哥が「王健に真実を話させることができるかもしれない」ともらしたのである。

詳しい事情については語らなかったが、王健が追い詰められていたのは明らかだ。口封じのためにいつ殺されても不思議ではない状況にあった。

おそらく、身の安全を守る方法があるとすれば、海外に亡命し、全ての真実を明らかにすることだけだっただろう。全ての秘密を公開してしまえば、わざわざ海外まで暗殺者を送るほどの重要性はなくなるからだ。

あるいはこの番組が引き金になってしまったのかもしれない。結局、王健は真実を語ることなく怪死を遂げることになったのだった。

郭文貴がさらなるリークを予告している

だが、彼の不幸な死によって終わったわけではない。海南航空の経営危機はまだ続いているし、さらなる追い打ちがかかった。米ニューヨーク・ポスト紙によると、ニューヨークに保有するビルを売却するよう、米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)に命じられたという。このビルはトランプタワーのすぐ近くに位置している。安全保障の観点から保有が許されなかったようだ。

郭文貴が海南航空に関するリークを始めてから1年、ついにアメリカ政府が動き出したというわけだ。習近平政権と深く結びつく海南航空への締め付けは、中国共産党に対する制裁にほかならない。今後さらに大きく展開する可能性が高いだろう。

そして、海南航空にまつわる一連の問題以上に衝撃的なのは、郭文貴がまだまだリークの「ネタ」は残っていると公言している点だ。「路徳訪談」において、アリババグループ(ジャック・マーの会社だ)、テンセント、ワンダグループなど、中国を代表する大手企業32社について、今後秘密を公開していくと予告している。

世界的企業へと成長した海南航空ですら、郭文貴のリークに耐えられず、現在の惨状に追い込まれた。今後32社もの大企業がもし同じ運命をたどるなら、もはや1企業の問題を超え、中国経済全体に関わる一大事だ。

経営者にとっては、業績以上に自らの命を不安に思っているだろう。中国で大企業を経営するためには政治との太いパイプが必要だ。いわば全ての大企業家は政商であり、暴かれれば致命傷となる「闇」を持っている。恐るべき情報網を持つ郭文貴がどれだけの事情を把握しているのか、戦々恐々としているわけだ。

そして、私もドキドキしている(笑)。中国の政治家とつながりもなければ、後ろめたいこともない私だが、言論人として依頼された番組には積極的に出演している。その1つが郭文貴も出演する「路徳訪談」なのだ。

この番組が中国政局に与えた巨大な影響力を考えれば......。私のドキドキを理解してもらえるだろうか。

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プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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