コラム

尖閣問題も五輪ボート会場問題も「ノーベル賞マインド」で

2016年10月25日(火)18時01分

 受賞確実なのは尖閣諸島問題、南シナ海問題の平和的解決だろう。その時にはぜひ日本と中国の政治指導者が共同受賞して欲しいと願っている。韓国の金大中元大統領は北朝鮮との平和と和解のために尽力したとして2000年にノーベル平和賞を受賞したが、カウンターパートの金正日総書記は選ばれていない。まあ平和賞を出せない理由もよくわかるが、一方だけが評価されたことが、その後の朝鮮半島問題の混迷につながっているように思う。

 その意味で、尖閣問題解決でノーベル平和賞が授与される時は日中両国の指導者が受賞するべきだ。あるいは1人で日中の架け橋を体現する「元・中国人、現・日本人」の私、李小牧が受賞するのもいいかもしれない。その際には賞金のすべてを東京・歌舞伎町と北京・三里屯の繁華街で使い果たし、両国経済の振興に尽力するつもりだ(笑)。

 さて、問題は尖閣問題解決のための"ノーベル賞級"のアイディアがあるかどうか。具体策は企業秘密とさせてもらいたいが(笑)、袋小路にはまった難題だけに並大抵のやり方では解決することはできない。大隅教授よろしく、「前例にとらわれない大胆な発想」「他者を巻き込み、ウィン・ウィンの関係を築いていくオープンな姿勢」が不可欠だ。ノーベル賞を次々に獲得している日本人ならば、大胆な発想を生み出すことは十分に可能なはずだ。問題はオープンな姿勢だろう。

【参考記事】中国はなぜ尖閣で不可解な挑発行動をエスカレートさせるのか

オープンであれ! 歌舞伎町で学んだ知恵

 最近、東京五輪・パラリンピックのボート・カヌー競技会場の変更問題について、国際オリンピック委員会(IOC)が韓国開催を検討しているとのニュースが流れた。「日本の国威失墜だ」「韓国開催など絶対に許せない」と反発した人が多いようだ。「韓国開催をちらつかせれば、日本は東京開催を受け入れる。IOCのブラフだ」とうがった見方をする人までいる。

 だがIOCが韓国開催を持ちかけてきたなら、それはチャンスではないか。もし私が東京五輪の責任者ならば諸手を挙げて賛成するだろう。

【参考記事】小池都知事:クリーンな東京五輪を実現するために

 五輪の成功にはより多くの外国人観光客に来てもらうことが必要だ。世界中の人々に来てもらいたいが、距離の面からして隣国の人々が中心になる。ボート・カヌー競技だけでも韓国で開催すれば、東京五輪そのものへの注目度が高まり、日本を訪れる韓国人も増えるはずだ。近視眼的な見方ならばボート競技の韓国開催は"損"に思うかもしれない。しかし胸襟を開いてオープンな姿勢を示すことは最終的には"得"になる。

 どんな相手でもまずはオープンな姿勢で受け入れること。これが歌舞伎町で学んだ新宿案内人の知恵だ。私の提案に賛成するかどうかはあなた次第。ただ、まずは自分の考えが偏屈なものではないか、振り返って欲しい。1人でも多くの人が大胆かつ柔軟、そしてオープンな"ノーベル賞マインド"を持てば、日本も、世界も変わっていくのだから。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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