コラム

「右肩下がり」岸田政権の命運を左右する分岐点

2023年01月25日(水)18時00分

実は底を打った? 岸田政権の支持率

この1月に行われた報道各社の世論調査結果は、次の通りだ(共同通信と日経・テレビ東京は現時点で未発表)。

読売新聞・日本テレビ「39%」(先月と同じ。1/13-15実施)
産経新聞・FNN「37.7%」(0.7ポイント増加。1/21-22実施)
朝日新聞「35%」(4ポイント増加。1/21-22実施)
NHK「33%」(先月から3ポイント減少。1/7-9実施)
テレビ朝日「28.1%」(3.0ポイント減少。1/21-22実施)
毎日新聞「27%」(2ポイント増加。1/21-22実施)
時事通信「26.5%」(2.7ポイント減少。1/13-16実施)

これを見ると、対面方式で実施される時事通信社の結果が26.5%で最も低く、他に毎日新聞、テレビ朝日も3割を切る数値になっている。政権発足以来の「最低記録を更新」する結果となっており、岸田政権が依然として危機に瀕していることを物語っているようにも思える。

他方で、12月の調査結果と比較して見ると、読売新聞・日本テレビは「横ばい」、産経新聞・FNNに加えて、自公政権に厳しい調査結果が出やすいとされる朝日新聞と毎日新聞でも逆に、支持率が増加している。これはどういうことか。

一つには、岸田政権には一定の支持層があり、どんなに批判が集まっても「3割前後」の支持率は割れないという意味で「底打ち」に達した、つまり「下げ止まった」と見ることもできよう。

しかし、岸田首相には、戦後レジームの総決算を唱える安倍元首相を熱狂的に支持した岩盤支持層的なものはもともと存在するとは言い難い。むしろ自公各党の支持層を中心に、訪米・欧州歴訪で見せた「外交の岸田」や、年明けから最重要政策として前面に出てきた「異次元」改め「次元の異なる少子化対策」を「好感」した層が「増加」したと見ることもできよう。

その場合、岸田政権の支持率は今後、個別的な政策の打ち出し次第で更に上向いていく可能性がある。まずは、新型コロナウイルスの扱いだ。政府は5月の大型連休明けにも、新型コロナウイルスの感染法上の位置づけを「2類」から、季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる方針だ。コロナ禍が収束したとは言えないとしても、かねてより新型コロナウイルスを「2類」に指定し続けることの弊害は指摘されてきた。ようやく「正常化」すると見る向きも多く、外国人観光客によるインバウンド需要の爆発とあいまって、政権支持率が上向く好材料となろう。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story