コラム

BBC次期会長はグーグル元幹部...編集経験乏しい元五輪選手はAI時代の公共放送を救えるか

2026年03月26日(木)10時20分
マット・ブリティン

BBCの次期会長、マット・ブリティン(2016年11月撮影) Stefan Wermuth-REUTERS

<マット・ブリティンはグーグルで欧州・中東・アフリカ事業トップを務めていた>

[ロンドン発]英BBC放送次期会長に米グーグルで欧州・中東・アフリカ事業トップを務めたマット・ブリティン氏(57)が就任する。5月18日の予定。ティム・デイビー会長は昨年、米議会襲撃を巡るドナルド・トランプ米大統領演説の編集問題で辞任を表明していた。

【動画】マット・ブリティンとは何者か?

ブリティン氏はグーグルで約20年勤務、昨年退社後は休養を取っていた。英ケンブリッジ大学でボート競技に打ち込み、1988年ソウル五輪の英国代表にも選ばれた。編集経験は乏しいが、インターネットだけでなく人工知能(AI)の荒波にもまれるBBCの舵取りを任された。


ブリティン氏は「今は真の危機であると同時に大きな好機でもある。BBCにはニュースが生まれる場所にも視聴者がいる場所にも同時にしっかり存在できるだけのスピードと勢いが必要だ」とデジタル環境への適応を強く意識していることをのぞかせた。

激変するメディア環境で組織改革を主導できる人物

BBCのサミール・シャー理事長は起用した理由について「変革の只中にあるビッグテックという複雑な巨大組織を率いてきた深い経験を持つ」点を強調し、激変するメディア環境の中で組織改革を主導できる人物だと評した。

最大の課題は来年期限を迎える王立憲章の更新交渉だ。BBCの存在意義や統治の枠組み、受信料を含む将来の資金モデルがここで決まる。シャー理事長は「BBCと公共放送の未来にとり、かつてない大きな岐路となる」と制度の抜本的な見直しが避けられないとの見方を示した。

他にも課題は山積する。トランプ氏が起こした約100億ドル規模の名誉毀損訴訟への対応だ。BBCはすでに編集に問題があったとして謝罪している。来年、米フロリダ州で本格審理に向かう見通しで、BBCの編集責任と組織統治が問われる。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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