コラム

BBC次期会長はグーグル元幹部...編集経験乏しい元五輪選手はAI時代の公共放送を救えるか

2026年03月26日(木)10時20分

大手プラットフォームとの新しい付き合い方

BBCは近年、YouTubeやネットフリックス、ディズニーなど米巨大プラットフォームに押されてきた。若い視聴者の時間は放送から動画配信やソーシャルメディアへ移り、BBCは自前の配信基盤iPlayer強化や大手プラットフォームとの新しい付き合い方を迫られている。

英紙フィナンシャル・タイムズ(3月25日付)は、BBC内部では組織が直面するのは存立に関わる脅威であり、最も重視されたのがブリティン氏の経営手腕と受け止められていると報じた。巨大テック企業で培った経営能力と技術理解に期待が寄せられる。


その一方で最も大きな懸念として浮上しているのが、報道・編集の現場を率いた経験の乏しさだ。元BBC幹部の間には「編集面の専門性を欠くことが弱点になりかねない」との見方がある。BBC会長は公共放送の編集文化と報道倫理を守る象徴だからだ。

「なぜ放送や制作の実績がない人物をトップに選ぶのか」

最大野党・保守党のダミアン・コリンズ元下院デジタル・文化・メディア・スポーツ委員会委員長は英紙タイムズ(同日付)に「BBCはアイデンティティーの危機に陥っているのではないか。なぜ放送や制作の実績がない人物をトップに選ぶのか」と疑問を呈している。

BBCはこの10年、実質ベースで大幅な資金減に直面し、人員削減や番組予算の圧縮を余儀なくされてきた。政治からは受信料制度の見直し圧力が強まり、視聴者は中立性への不信感を募らせる。そこへ動画配信とAIを核にするメディア環境の激変が押し寄せる。

デジタル化を進めるだけではBBCが直面する問題は解決しない。公共放送としての独立性、編集の信頼性、全国民に開かれた普遍的サービスという理念をどう守るのかが問われている。ブリティン氏は技術と経営だけでなく、BBCがなぜ必要なのかを語り直さなければならない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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