コラム

「上級国民」が地位とお金を使って未成年者を弄ぶ...BBC大物司会者「性スキャンダル」の陰惨な中身

2023年07月13日(木)18時03分
BBC司会者ヒュー・エドワーズ

未成年者性的スキャンダルで告発されたBBC司会者ヒュー・エドワーズ氏(2020年1月) Chris Jackson/Pool via REUTERS/File Photo

<看板キャスターに狙われた子どもの母親が語ったショッキングな疑惑の中身。これが事実ならBBCには大きなダメージとなる>

「テレビで彼を視ると気分が悪くなる。うちの子の人生を壊した英BBC放送の司会者を糾弾する。子どもの純真さを奪い、死に追いやるかもしれないコカインの購入資金を渡し続けた」。性的な写真の見返りに17歳からの3年間にわたり自分の子どもに計3万5000ポンド(約629万円)以上を渡した――と母親からBBCの看板キャスターが告発された。

7月7日、英大衆紙サンに匿名で報じられた未成年者性的スキャンダルは12日、BBC司会者ヒュー・エドワーズ氏(61)の妻が「夫は6日に自分に対する疑惑があることを初めて聞かされた。夫は深刻な精神衛生上の問題を抱えている。重度のうつ病で現在、入院治療を受けている。回復すれば記事に反論するつもりだ」と実名で主張したため、急展開する。

1984年にBBCに入局したエドワーズ氏は「10時のニュース」を担当し、昨年9月にはエリザベス女王の崩御を伝えた英国で最も名の知れた看板キャスターだ。どんな状況でも自信に満ちた冷静なパフォーマンスを見せるエドワーズ氏の評価は局内外で高く、ウィリアム皇太子とキャサリン妃の結婚式、チャールズ国王の戴冠式など、幾多の王室行事を担当した。

このニュースを聞き、筆者はびっくり仰天した。エドワーズ氏はまさに「英国公共放送の顔」で、スキャンダルが事実と確認された場合、BBCの信用が地に落ちるのは必至だ。受信料制度を維持できなくなるかもしれない。支配層が地位とお金を使って立場の弱い未成年者の性を弄ぶという陰湿な図式がまたも繰り返されたのかとの思いがよぎる。

「幸せな若者から幽霊のようなコカイン中毒者に」

BBCは今年3月、「ジャニーズ王国」の創設者ジャニー喜多川(2019年、87歳で死去)の児童性的虐待を取り上げたTVドキュメンタリー「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」を放送し、ジャニーズ事務所のタレント抜きでは番組を制作できないNHKや民放だけでなく、「見ざる聞かざる言わざる」を続けてきた日本の新聞・雑誌を批判したばかり。

それだけにエドワーズ氏の疑惑に対し、BBCは襟を正す必要がある。サン紙によると、母親は、子どもがエドワーズ氏から受け取ったお金でコカインを購入し続けていることに気づき、5月19日、BBCに「もう、うちの子にお金を与えないようエドワーズ氏に止めさせてほしい」と苦情を申し立てた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story