コラム

「欧州で最も危険な女」ジョルジャ・メローニとは? イタリア初の女性首相誕生へ

2022年09月23日(金)14時10分
ジョルジャ・メローニ

イタリア初の女性首相に就任する見通しのジョルジャ・メローニ党首(22日、筆者撮影)

<9月25日のイタリア総選挙は、左派の分裂で右派連合の勝利が確実。極右とも称される「イタリアの同胞」のメローニ党首はいかにして国民の心を掴んだか>

[ローマ発]イタリア総選挙の投開票が25日に迫る中、ネオファシストに起源を持つ新興右派政党「イタリアの同胞」などの右派連合が22日夜、ローマのポポロ広場に数千人を集めて選挙集会を開いた。左派が分裂しているため右派連合の勝利は確実。「イタリアの同胞」のジョルジャ・メローニ党首(45)がイタリア初の女性首相になる見通しだ。

最新の世論調査によると、右派連合を組む「イタリアの同胞」24.7%、右派政党「同盟」(マッテオ・サルビーニ書記長)12.2%、中道右派「フォルツァ(頑張れ)・イタリア」(シルビオ・ベルルスコーニ元首相)7.7%。一方、分裂している左派は民主党21.5%、「五つ星運動」13%にとどまっている。

メローニ氏は集会で「麻薬の売人、泥棒、レイプ犯、マフィア」が最大の敵だとし治安の強化を約束、大統領制への移行を訴えた。メローニ、サルビーニ、ベルルスコーニ3氏は壇上で肩を並べこそしたものの、共有プログラムではなく、それぞれ自らの看板政策を強調した。選挙で左派に勝ち政権を握ることを優先した「野合」がいつまで続くか懸念を抱かせた。

220923kmr_irp02.JPG

左からサルビーニ、ベルルスコーニ、メローニの3氏(同)

「イタリアを復活させる理想的なリーダーがメローニ」

会計士になって60年のアントニオさんは「イタリアを復活させ、経済を再び活性化させる理想的なリーダーがメローニです。『イタリアの同胞』は極右政党ではありません。単なる右派政党で、極右とは違います。重要なのは祖国におけるわれわれの権利。特に家族の権利、増税されない権利です。イタリアの労働者のキリスト教的権利を取り戻したい」と語る。

「メローニが新しい首相になるのは、わが国でそれを実現できる唯一の女性だからです。メローニはイタリアを変えることができる唯一の女性です。これまでの災難からイタリアを救うことができるのは彼女だけです」とアントニオさんは力説した。「イタリアの同胞」人気は7月に崩壊した政権に参加していなかったことがプラスに働いている。

レストラン経営者のヴァンダ・ペレグリーニさん(50)は「私がメローニを支持するのは、彼女がイタリアで初めて首相になる女性だからです。彼女は常に市民の側に立ち、イタリア人の要求に応えてきた有能な女性です。最も重要なのは、彼女が若者のために、すべての家族のために、イタリアにふさわしい価値観を取り戻すために行っている活動です」と話す。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

26年の米成長率予想2%に上振れ、雇用は低調に推移

ワールド

元FBI長官とNY司法長官に対する訴追、米地裁が無

ワールド

再送-トランプ氏、4月の訪中招待受入れ 習氏も国賓

ワールド

米・ウクライナ、和平案巡り進展 ゼレンスキー氏週内
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story