コラム

首相も「もう無理」...反移民が燃え上がる「寛容の国」スウェーデンで極右政党が躍進

2022年09月13日(火)18時04分

「非北欧系」の人口を最大50%に抑える案も

かつては高福祉高負担の福祉国家モデル、男女格差が少ない国として称賛されたスウェーデンの治安がここまで悪化してしまったのは、門戸開放で受け入れた移民を社会に統合させていく政策を伴っていなかったからだ。「非北欧系」が多数を占めるゲットーが増えているとして「非北欧系」の人口を最大50%に抑える案まで浮上している。

スウェーデンほどではないにせよ、移民の急増は社会の右傾化、反動を引き起こす。欧州連合(EU)加盟国の議会でも強硬右派や極右のポピュリスト政党が議席を伸ばすのは珍しくなくなっている。独統計会社statistaのまとめなどによると、各国議会における議席占有率は次の通りだ。

ハンガリー「フィデス・ハンガリー市民連盟」59%
ポーランド「法と正義」51%
イタリア「同盟」21%
フィンランド「真のフィンランド人」20%
オーストリア「オーストリア自由党」17%
フランス「国民連合」15%
スペイン「Vox」 15%
ベルギー「フラームス・ベランフ」12%
オランダ「自由党」11%
ドイツ「ドイツのための選択肢」11%
デンマーク「デンマーク国民党」9%
ポルトガル「Chega」 5%

ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」は完全に市民権を獲得し、今年4月のフランス大統領選では「国民連合」を「脱悪魔化」したマリーヌ・ルペン氏がエマニュエル・マクロン仏大統領に詰め寄った。極右のポピュリスト政党への投票は政権に対する明確な批判の表明でもある。ポピュリスト政党をいくら批判してみたところで問題は何一つ解決しない。

イタリア総選挙(9月25日)でトップを走るのは新興の極右ポピュリスト政党「イタリアの同胞」だ。ジョルジャ・メローニ党首が同国初の女性首相になる可能性が強い。「イタリアの同胞」はネオ・ファシスト政党の政治的後継者だ。ウクライナ戦争によるエネルギー高騰やインフレで市民の生活が困窮する中、欧州政治は歴史的な転換点を迎えようとしている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story