コラム

COP26合意「赤字国債ならぬ『緑字国債』発行に期待」──和製ソロス 浅井將雄氏が語る

2021年11月18日(木)20時22分
浅井將雄氏

「和製ソロス」と呼ばれる「キャプラ・インベストメント・マネジメント」共同創業者の浅井將雄氏(COP26で筆者撮影)

<「資金が流れ込むところにはチャンスがある。今は明らかにESG、特に環境、温暖化対策には資金が集まる流れになっている」と、英ヘッジファンドの共同創業者は言う。ロンドンを史上初の「ネットゼロ金融センター」にする英政府の野心的な目標も、いずれ金融市場のデファクトスタンダードになるという。日本はどうする?>

[ロンドン発]世界の平均気温上昇を産業革命前に比べ摂氏1.5度に抑える努力を追求すると宣言した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)。それを実現する英中央銀行・イングランド銀行前総裁のマーク・カーニー氏率いる「2050年ネットゼロ(温室効果ガス排出量を実質ゼロにすること)グラスゴー金融同盟」(参加45カ国450機関)の金融資産は130兆ドル(約1京4800兆円)に達した。

リシ・スナク財務相はロンドンを史上初の「ネットゼロ金融センター」に生まれ変わらせ、数十億ポンドのグリーンボンド(環境債)を発行する資本市場メカニズムを構築すると表明した。イギリスの金融機関や上場企業は50年までに脱炭素化する移行計画を23年までに公表しなければならなくなる。

国際金融都市ロンドンに本拠を構える債券では世界最大級のヘッジファンド「キャプラ・インベストメント・マネジメント」共同創業者で、大阪大学大学院国際公共政策学科招聘教授(ESGインテグレーション研究教育センター)に就任した浅井將雄氏は「日本でも『赤字国債』ではなく『緑字国債』が発行されるかもしれない」と期待を寄せる。

日本人では唯一、英高級紙タイムズの「リッチリスト(長者番付)」に名を連ね、「和製ソロス」と呼ばれる浅井氏をCOP26開催中のグラスゴーで直撃した。

──リシ財務相の「ネットゼロ金融センター」宣言をどう受け止めましたか

「私自身、キャプラ・インベストメント・マネジメントという運用会社を経営しています。リシ財務相の表明に伴い、キャプラも主要金融機関のメンバーとして23年までにネットゼロのビジネスモデルを英金融行為規制機構(FCA)に提出していきます。遅くとも30年にネットゼロにします。キャプラも外部の資金を預かり、運用する中で、まず、ESGポリシーを策定し、投資におけるネットゼロ、ESG(環境・社会・ガバナンス)の格付けを取り、投資家に公表していきます」

「投資の面からも明らかに目に見えた形で地球環境に貢献していくという方向性は金融機関の今後のあり方として非常に重要な姿で、われわれも積極的に関わっていきます。金融都市シティーでのネットゼロというのは非常にアグレッシブなアプローチで今後、ロンドンだけでなく、金融都市がネットゼロへの道を開くための大きなデファクトスタンダードになる可能性があります」

「COP26はパリ協定で決められたことを数値目標として各国政府が何をやっていくかということを打ち出す重要な会議だったので、世界中から注目されました。その中でいろいろ発表されましたが、やはりイギリス政府が、シティーという金融都市全体のネットゼロをいち早く打ち出したことは非常に大きな政治的功績と言えるでしょう」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

香港高層住宅群で大規模火災、44人死亡 過失致死容

ビジネス

米ホワイトハウス付近で銃撃、トランプ氏は不在 容疑

ビジネス

中国は競争相手にシフト、欧州は内需拡大重視すべき=

ビジネス

米経済活動、ほぼ変化なし 雇用減速・物価は緩やかに
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story