コラム

美人補佐官とダブル不倫キスの英保健相が辞任 葬式でも距離守った遺族が激怒

2021年06月28日(月)06時10分
辞任したハンコック英保健相

コロナ対策の責任者でありながら「社会的距離」を守らなかったとして辞任に追い込まれたハンコック英保健相 Henry Nicholls-REUTERS

[ロンドン発]「絶望的な保健相を交代させるのは一つのことに過ぎない。コロナが猛威をふるう冬が再び来る前に、これまでのコロナ対策を検証して、その教訓から学ぶべきだ」――大臣執務室で補佐官と熱い抱擁を交わしていたマット・ハンコック英保健相(42)が引責辞任した。それを受け、死者15万人を超えるイギリスのコロナ遺族の会が26日夜、緊急声明を出した。

コロナ対策を担うハンコック氏が、英オックスフォード大学時代からの友人で補佐官として自らが採用した億万長者のロビイスト、ジーナ・コラダンジェロさん(43)と5月上旬に執務室でキスしている現場をとらえた防犯カメラの写真を英大衆紙サンが25日付1面でスッパ抜いた。超ど級のスクープだ。ハンコック氏は感染予防のため屋内で1~2メートルの距離をとるという政府のガイドラインを破っていたとして謝罪した。

kimuraphoto.jpeg
英大衆紙サンの1面

ボリス・ジョンソン首相は謝罪を受け入れ、プライバシーには立ち入らないとして「問題は解決済み」とハンコック氏を続投させる意向を示していた。不倫スキャンダルでは妻か、不倫相手かのどちらか一方を選べば、お咎めなしというのが英政界の慣例だ。しかし、サン紙は翌26日、ハンコック氏がドアの隙間から廊下に誰もいないことを確認した上、ドアにもたれ掛かってジーナさんと抱き合う様子を録画した動画を公開して追撃し、往生際の悪いハンコック氏に引導を渡した。

辞任書簡でワクチン展開の成功を自画自賛

ハンコック氏は首相宛ての辞任書簡で「正直言って、政府のコロナ対策は多大な自己犠牲を払った人たちによるところが大きい。にもかかわらず自分自身のガイダンス違反で彼らを失望させた」と改めて謝罪する一方で、ワクチン集団接種の成功で世界をリードしたことを自画自賛してみせた。ハンコック氏の後任にはサジド・ジャヴィド前財務相が任命された。

ハンコック氏には妻と子供3人、ジーナさんにも夫と子供3人がいる。ハンコック氏は家族より政治家としてのキャリアを選び、抱擁写真をスクープされる直前、妻の元を去ることを即断した。

ドミニク・カミングズ元首席特別顧問が昨年3月、ロックダウン(都市封鎖)が実施された直後にもかかわらず、コロナ感染が疑われる家族を車に乗せロンドンから、実家のあるイングランド北東部ダラムまで移動したと批判され、与党・保守党の支持率が急落したことがある。移動・行動制限で我慢を強いられる国民は政策決定者のルール違反に厳しい。このため保守党内ではジョンソン首相にハンコック氏を更迭するよう求める声が強まっていた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ハーバード大の免税資格剥奪を再表明 民

ビジネス

米製造業新規受注、3月は前月比4.3%増 民間航空

ワールド

中国、フェンタニル対策検討 米との貿易交渉開始へ手

ワールド

米国務長官、独政党AfD「過激派」指定を非難 方針
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story