コラム

大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

2024年05月09日(木)17時51分

撤退の決断ができない裏にある「事なかれ主義」

緩和策の実施によって円安と株高が発生するなど、一定のインフレ期待は生じたものの、実体経済の回復に寄与していないことは、実施3年目あたりから明確だったといえるだろう。コロナ危機前に撤退を決断していれば、今のような際限のない円安は回避できたかもしれない。

日本の産業界も、1990年代以降、国際競争の枠組みが大きく変化したにもかかわらず、昭和型の手法に固執し、多くの企業が莫大な損失を抱えた。デジタル化の流れが誰の目にも明らかとなった2000年代に経営改革を実施していれば、ここまでの低賃金にはならなかったはずだ。

決断ができないということは、組織として責任の所在がはっきりせず、事なかれ主義が横行していることにほかならない。規模の大小や分野にかかわらず、似たような現象が何度も観察されるということは、日本社会に共通する弱点といえる。国家の衰退が鮮明になっている今、もう見て見ぬフリはできない。

ニューズウィーク日本版 2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月7日号(9月30日発売)は「2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡」特集。投手復帰のシーズンも地区Vでプレーオフへ。アメリカが見た二刀流の復活劇

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ攻撃、数十人死亡と地元保健当局 停

ビジネス

政府機関閉鎖が最大の関心事、議会動向に注目=今週の

ワールド

アングル:トランプ政策で留学生減、財政難の米大学に

ワールド

アングル:米国抜きの貿易連携模索するEU、「トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿すると「腎臓の検査を」のコメントが、一体なぜ?
  • 4
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 5
    イエスとはいったい何者だったのか?...人類史を二分…
  • 6
    「美しい」けど「気まずい」...ウィリアム皇太子夫妻…
  • 7
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 8
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 9
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 10
    一体なぜ? 大谷翔平は台湾ファンに「高校生」と呼ば…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 8
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story