コラム

労働者を救うはずの「リスキリング支援」、現実には企業の「解雇の道具」に?

2022年10月18日(火)17時30分

失業者が増えてしまっては経済に逆効果

だが、目先の利益を優先し、余剰人材をそのまま社外に放出すれば、一旦は失業者になってしまうため、次の仕事に就き、相応の賃金を得られるまでに時間がかかる。マクロ的には雇用者報酬の総額が減るので、消費拡大にはむしろ逆効果だ。

日本では、残業代を払わない、無制限のサービス残業を強要する、同一労働同一賃金を適用しないなど、基本的な労働法制を守らない企業が依然として存在している。昭和の時代には、雇用を維持する代わりに労働法制については緩く適用するという暗黙の了解が存在していたが、今はそのような時代ではない。

企業に労働法制を遵守させるという当たり前の行政指導を行うだけで、賃金は確実に上昇し、いわゆるブラック企業は市場からの退出を余儀なくされるだろう。この過程でやむなく失業した人に手厚いリスキリング支援を行えば、企業の再編と労働者のスキルアップを同時に実現できる。雇用の流動化は結果であって、目的ではないという点を忘れてはならない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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