コラム

日本の「劣悪」な住宅事情が、新型コロナでついに変わる?

2020年07月15日(水)11時26分

MAGINIMA/ISTOCK

<リモートワークの拡大で好調な住宅関連市場が、今後は日本経済の成長のカギを握る>

外出自粛という逆風があったにもかかわらず、家具やホームファッションを扱うニトリが快走を続けている。日本のビジネスパーソンにとって、家は帰って寝るだけの場所だったが、テレワークへの移行で住宅に対する認識が大きく変わりつつある。

消費主導で経済を成長させる国は、ほぼ例外なく住宅政策が充実している。既に輸出から消費に経済の主役は変わっているが、住宅政策は成長のカギを握る重要なテーマといってよい。

ニトリホールディングスが発表した2020年3~5月期(第1四半期)の決算は、売上高が前年同期比3.9%増の1737億8000万円、純利益は同25.4%増の255億1900万円と大幅な増収増益だった。

同社の業績が急拡大したのは、外出自粛で家にいる時間が増えたことや、テレワークの進展によって、収納家具やキッチン用品、ホームオフィス用品の販売が伸びたことが要因である。店舗を持つ他の企業と同様、ニトリも外出自粛という逆風にさらされたが、そのマイナスをはるかに上回る業績だった。

当初はコロナが終息すれば職場も元の状態に戻るとの見方も多かったが、カルビーのようにコロナ危機を受けて在宅勤務を標準業務形態に位置付ける企業も出てきた。同社は定期代の支給もやめ、出社が必要な時にその都度、交通費を支払う方式に変更するなど本気度が高い。これはかなり先端的なケースであるとはいえ、多くの企業が何らかの形でテレワーク拡大を迫られる可能性が高く、住宅関連市場は今後、大幅に伸びると考えられる。

住宅事情が悪いのは政策のせい

今回、急きょテレワークへの移行が進んだことで、自宅に仕事のスペースを確保するため苦労した人も多いだろう。日本では、家が狭かったり防音や断熱が不十分など、住宅事情が悪いのは仕方のないことだという認識が一般的だが、それは単なる思い込みである。住宅事情が悪いのは、景気対策を最優先し、品質の悪い新築住宅を大量供給してきた住宅政策の結果であり、逆に言えば住環境は政策によっていくらでも変えることができる。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ各地に攻撃、キーウで23人負傷 鉄道も被

ビジネス

英建設業PMI、6月は48.8に上昇 6カ月ぶり高

ビジネス

中国の海外ブランド携帯電話販売台数、5月は前年比9

ビジネス

焦点:英で「トラスショック」以来の財政不安、ポンド
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    1000万人以上が医療保険を失う...トランプの「大きく…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story