コラム

資本主義はついにここまで来た。「自分」を売り出すVALUが市場概念を覆す

2017年07月04日(火)11時38分

一方で、著名人がただお金を集めることだけを目的に自身を上場し、あとはほったらかしにして批判されるというケースも出てくるだろうし、著名人を名乗った詐欺や、上場した個人どうしがお互いに株価をつり上げるなど、不正行為が発生する可能性も否定できない。

一連の仕組みに対して嫌悪感を示す人が多いことは容易に想像できることであり、このサービスが本格的に普及してきた場合、かなりの議論を呼ぶことは間違いないだろう。

しかしながら、従来、大きな仕掛けが必要だった資本市場の運営という業務も、ITを活用することでいとも簡単にできてしまうという現実について、わたしたちは認識しておく必要がある。

資本主義社会において、集中管理された取引市場が存在していたのは、技術的な制約上、そのような仕組みがなければ、市場運営ができなかったからである。金融商品の定義(収益が期待できるなど)についても、こうした物理的な仕組みに強く依存していた可能性が高いのだ。

テクノロジーの進歩で、多対多(いわゆるCtoC)の市場運営が低コストで可能となれば、従来とは異なる概念の資本取引が発生する余地は十分にある。個人の人気を金銭化するVALUの登場は、こうした新しい資本主義のひとつの方向性を示しているのかもしれない。

【参考記事】EU離脱なら失業と新自由主義がやってくる

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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