コラム

シリア・北朝鮮...地政学的リスクに市場が反応しない理由

2017年04月18日(火)12時10分

市場が落ち着いているのは長期化しないと見られているから

トランプ政権の自国中心主義には、選挙期間中からトランプ氏を強く支持してきた保守強硬派の意向が強く働いている。保守強硬派の中心人物として知られているのが、保守系ネット・メディア運営者でトランプ氏の選挙参謀も務めたスティーブ・バノン主席戦略官である。バノン氏は右翼的な人物として知られ、人種差別的発言が何度もメディアのやり玉にあがっている。

先日のシリア攻撃について、米国第一主義に反するとして強く反対したのがこのバノン氏だった。主流派はバノン氏の動きを牽制し、トランプ氏もこれを受け入れ、攻撃が実施された。バノン氏はNSC(国家安全保障会議)のメンバーからも外されており、政権内での影響力は急低下している。

今回の決断によって米国はオバマ政権以前の米国に戻ったわけだが、所詮は元に戻っただけであり、その決断自体に大きなインパクトはない。あくまで化学兵器の使用に対する攻撃であり、中東での軍事作戦が長期化する可能性は今のところ低い。市場が落ち着いているのは、こうした状況を冷静に受け止めた結果と考えられる。

【参考記事】突然だったシリア攻撃後、トランプ政権に必要なシリア戦略

このところ急速に緊迫度を高めている北朝鮮問題も同じである。北朝鮮に対する直接的行動を示唆するというのは、ブッシュ政権以来の出来事であり、中東問題と比較して優先順位が低い朝鮮半島問題がここまでエスカレートするというのは少々驚きである。

だがトランプ政権は電撃的な攻撃を示唆しながらも、北朝鮮に対しては核を放棄すれば体制を維持するとのメッセージも同時に送っている。トランプ流の派手な言動が目立つだけであり、核の放棄を最優先させるというスタンスは以前と何も変わっていない。

ただ市場は少し別のリスクを意識しながら一連の出来事を眺めている。それはなし崩し的に積極外交にシフトすることによって、トランプ氏が掲げる経済政策が遅延あるいは縮小する可能性である。

【参考記事】習近平は笑っているべきではなかった――米国務長官、シリア攻撃は北への警告

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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