コラム

安倍元首相ならトランプに助け舟を出す...正反対な石破首相はどうすべきか

2025年05月02日(金)15時40分

そうしたなか、第2次トランプ政権は現在、国債を約36兆ドル(GDPの120%以上)も累積。今年満期を迎える国債の利払いや借り換えで計約10兆ドルという多額の国債発行を迫られ、不況やインフレ悪化も懸念されている。

関税政策の停止を求めてニューヨークなど国内12州が国際貿易裁判所に提訴する事態にまで発展。株価暴落を受けてトランプは中国への関税を緩めざるを得なかった。成果を示さない限り、政権への支持が落ち込むのは明白だ。


こういうとき、安倍晋三元首相なら何か助け舟を出したことだろう。日本外交に典型な、官僚的で細かいことは言わない。トランプ支持層にも響く端的で分かりやすい言葉(とはいえ、嘘や実行できないことは言わない)がいい。

一方、真面目な石破茂首相はトランプと歩調を合わせるのには不向きだ。挑発的で過激な言動を繰り返すトランプを前に、日米同盟を見直すべきだという声もあるが、トランプに日本を捨てる気はない。

擦り寄る必要はないが、トランプの言い分を正面から論破したりするのも逆効果。アメリカの知人いわく、アメリカ人に対しては、分かりやすい損得勘定などに訴えかけるのが効果的だという。

安倍政権はこれを地で行っていた。いつまでも「安倍首相がいたなら」といじましいことを言っていないで、石破という手持ちのカードでどう勝負するかを考えるしかない。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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