コラム

金正恩の「運勢」は、ロシアへの兵士派遣と韓国政治の混乱で最高潮...それでも日本は慌てる必要なし

2025年01月09日(木)18時45分
追い風が吹く北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長

ILLUSTRATION BY BOJO6666/SHUTTERSTOCK

<トランプ再選と尹錫悦大統領のオウンゴールという2つのチャンスを生かして、核保有国として半島の覇者に?>

北朝鮮は2024年、兵士や砲弾をロシアに送るという奇手で、食料やミサイル技術を得ただけでなく、こわもての韓国保守政権とアメリカの連合、そして上から目線で指図してくる中国からの圧力に対抗した。「朋友」ロシアに北朝鮮を取られた中国は、韓国にすり寄って活路を開こうとする始末だ。

そして年末。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の戒厳令不発というオウンゴールで、金正恩(キム・ジョンウン)と北朝鮮の運勢はさらに上向いた。韓国は政権が与野党のどちらに転んでも、北朝鮮への姿勢を軟化させるだろう。北朝鮮にとって、外交の選択肢の幅はぐっと広がった。


とはいえ、金正恩にとって最大の課題は自国の保全と自分の権力維持。そのためには、アメリカの脅威を除くことが一番だ。

24年はロシアと組むことでそれを達成したが、ドナルド・トランプ米大統領が再登場する25年は、米ロ双方と提携できるチャンスがある。ウクライナ停戦への動きに乗って、朝鮮半島和平ムードをかき立て、自国の存在を固めれば、韓国情勢が液状化している今、核保有国として朝鮮半島での覇権を握ることも夢ではない。

日本は北朝鮮を過度に警戒する必要はない。拉致問題の解決は、トランプが半島和平への動きを強めるタイミングを計り、国際的な交渉のテーブルに乗るよう仕立てていく。母親が日本出身の金正恩・与正(ヨジョン)兄妹は、日本に譲歩すれば国内で反発を食らいかねない微妙な立場に置かれているだろうからだ。


プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ウォルマートが上場先をナスダックに変更、崩れるNY

ワールド

インド、対米通商合意に向け交渉余地 力強い国内経済

ビジネス

米減税・歳出法案、26年上期GDPを0.4%押し上

ワールド

米議会予算局、トランプ関税による財政赤字削減予測を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story