コラム

2025年の世界を「枠」を外して考えてみると......

2024年12月23日(月)11時30分

その時は、韓国だけでなく北朝鮮もガバナンスを失うことになる。中国は、韓国にいる米軍との緩衝地帯である北朝鮮を確保するため、軍を出すかもしれない。その時米軍は、いやトランプはどう動くだろう。

そして、このトランプこそ、世界の枠組みをひっくり返すポテンシャルを持っている。しかし「トランプは世界を乱暴にひっくり返す」という思い込みが実は古く、「トランプは意外とまともだ」ということになったら、われわれの思考の枠組みは逆の方向からひっくり返る。

今回の大統領選からトランプは、以前の極右やマッチョ思想に訴えかける姿勢を抑え、米国民全体に呼びかけるアプローチを取っている。それは、対抗馬のカマラ・ハリスがマイノリティー出身であることを逆手に取った、巧妙なものだ。


プーチンは「院政」に入るかも

あまり注目されないが、この選挙戦を取り仕切ったスージー・ワイルズが、新政権では大統領首席補佐官に納まる。マイク・ウォルツ安全保障問題担当補佐官ら「まともな」人材も使い、政策全般を調整していくことは、今後のアメリカ、そして世界にとって意味深だ。

例えば欧州方面ではウクライナ停戦が一応成立するだろう。そこではNATO、ロシアとも今後の拡張を自制することを約束し、停戦を保障する平和維持軍の展開でも合意する。ロシアではプーチンが「勝利」を宣言して辞任し、「国家評議会」の長に納まる。次の大統領は、12月に訪中して習近平(シー・チンピン)国家主席とも会談したメドベージェフ前大統領あたりになるだろうが、国の大枠はプーチンが握り続ける。

このように「頭の体操」をしてみると、日本にとって世界の大枠は変わらないにしても、朝鮮半島から吹き込む隙間風が随分強くなってきたなと感じる。高句麗、新羅、唐が三つどもえの勢力争いを繰り広げた7世紀あたりに、われわれのマインドを設定しないといけないのだろうか。

【関連記事】
来年に向けて日本人の一番の薬は「マゾ的思考」をやめること
「またトラ」でウクライナ停戦が成立すれば、北朝鮮兵が平和維持軍に?

ニューズウィーク日本版 トランプ関税15%の衝撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月5日号(7月29日発売)は「トランプ関税15%の衝撃」特集。例外的に低い税率は同盟国・日本への配慮か、ディールの罠

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、北朝鮮にドローン技術移転 製造も支援=ウク

ビジネス

米6月建設支出、前月比0.4%減 一戸建て住宅への

ビジネス

米シェブロン、4─6月期利益が予想上回る 生産量増

ビジネス

7月ISM製造業景気指数、5カ月連続50割れ 工場
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story