コラム

トランプ2.0、強気の「MAGA」が逆目に出る時

2024年11月26日(火)14時00分

今回、市場が一番心配しているのは、金利動向だ。トランプが法人税を下げれば政府歳入は減り、財政赤字が膨らんで、国債増発が必要となる。これは将来の利払い費の膨張を生むだけではない。当面、国内の資本市場を圧迫して金利の上昇をもたらす。金利が上がるとローンなどの返済が滞り、金融メカニズムに目詰まりが生ずる。08年のリーマン危機のように、それが引き金となって大規模な不況が起きかねない。トランプは「MAGA」を目指して、米経済をかえって縮小させてしまうのだ。


「ビットコインで債務縮小」の危険

これに輪をかけて、トランプ周辺では今、「政府がビットコインを大量に買い取って、準備金として積み上げる」という案が浮上している。狙いは、ビットコインの値上がりで政府の財産を膨らませよう、GDP1年分以上にも累積した国債の負担を和らげようということにあるのだろう。

これは1720年、イギリスの南海会社バブル事件を彷彿させる。この時のイギリスも、度重なる戦争の費用を賄うため国債の発行が重なって、財政の負担となっていた。そこにロバート・ナイトという食わせ者が、東インド会社のカリブ海版である「南海会社」の株で国債を引き取る、つまり政府が利子を払う必要のない株で資金を手当てする、という案を仕掛けた。これで南海会社の株は一時暴騰するが、ねずみ講的バブルであることがばれて暴落し、この株に投機していた王室までがスキャンダルに巻き込まれる。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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