コラム

ニッポン製造業のマイナス材料は多いが、悲観一色ではない

2017年12月21日(木)18時10分

幸い、日本企業の現状は悲観一色ではない。富士フイルムはデジタル移行を予見して早くから業容転換を図った好例だ。コマツは現場からたたき上げた経営陣が商品をグローバルに展開する態勢を早くからつくってきた。セーレンは絹の成分に目を付けて繊維業から薬品関連事業にも進出。生活用品製造販売のアイリスオーヤマはアイデア製品で新しい需要を自ら創出し、家電の新たな雄になりつつある。

家電や携帯電話でも、部品分野では日本の優位が続く。中韓の企業も村田製作所やTDKの先端部品なしに製品を作れない。日本企業は電子部品の世界生産の3分の1以上を占めている。

これら部品を組み立てて完成品にする産業ロボット(人間との会話はできないが)の分野では、ファナックや安川電機が世界のトップをいく。IoT(モノのインターネット)の時代、日本は多量の情報を処理するプログラミングでは負けるかもしれないが、モノやヒトに装着するセンサー開発ではソニーやキーエンスが頑張っていくだろう。

ただ、自国企業の浮沈に国ごとに一喜一憂する時代は続くだろうか。ブロックチェーンで決済を一元化し、ロボットで極限まで大量生産できるようになれば、企業や工場が地元にあろうがあるまいが、人々は一様に豊かになるのでなかろうか。

<本誌2017年12月19日号掲載「特集:日本を置き去りにする作らない製造業」から転載>


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png
プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

緩和の出口戦略含め、財政配慮で曲げることはない=内

ワールド

習首席が米へのレアアース輸出に合意、トランプ大統領

ビジネス

アングル:中国製電子たばこに関税直撃、米国への輸入

ワールド

日米関税協議、「一致点見いだせていない」と赤沢氏 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっしり...「これ何?」と写真投稿、正体が判明
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 9
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story