コラム

日韓両国で窮地に追い込まれた旧統一教会、韓国での実態は日本とこれだけ違う

2025年12月25日(木)11時45分

とはいえ、問題が複雑になったのはこの先だった。金への捜査を行う特別検察はその過程で、統一教からの資金が国民の力のみならず、進歩系の現与党「共に民主党」議員にも渡っていたことを明らかにしたからだ。その中には鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官や田載秀(チョン・ジェス)海洋水産相など有力閣僚もおり、田は閣僚の職を辞任することを余儀なくされた。

とはいえ、この状況は日本からは奇妙に見える。冷戦期の朴正熙政権と密接な関係を持ち、情報機関である中央情報部と協力する形で日本を含む韓国国外での「反共運動」を推し進めてきた統一教(パク・チョンヒ)は通常、保守的さらには極右的な団体として知られており、進歩派とは無縁に見えるからだ。


系列企業が北朝鮮にも進出

しかし、それは誤解である。韓国国内での統一教は、宗教団体である以上に大規模な経済活動で知られている。傘下の企業には建設会社の「鮮苑建設」、冬季五輪が開催された平昌(ピョンチャン)のスキーリゾートを経営する「モナ龍平」、食品製造会社の「一和」などがあり、一和はプロサッカーチームも一時保有した。ビジネスは「反共」の範囲にとどまらず、一時期、北朝鮮内に合弁会社の「平和自動車」を設立・経営した。教育事業にも進出し、統一教が経営する鮮文大学校は、私立大学の雄である延世大学と並び日本人留学生が最も多い大学の1つだ。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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