コラム

元徴用工問題の解決案は日本政府の主張に沿った意外な妙手

2023年01月24日(火)12時30分

韓国側が自らの資金で問題への対処を自ら試みているのだから、この形は「元徴用工問題は韓国の国内問題」という日本政府の主張に沿った形になっている。財団に資金を出すのは、主として1965年の日韓請求権協定により得られた日本からの資金の恩恵を受けた企業である。例えばその代表格であるポスコの営業利益は、2021年には9兆2000億ウォン(約9600億円)にも達している。世界的大企業である彼らにとって、この解決案への協力により「植民地支配の被害者が受けるべき資金を横取りした企業」という韓国国内の汚名を返上できるなら、財団が必要とする数百億ウォンと目される金額は、決して大きなものではないはずである。

だとすれば、まずは韓国政府が自らの側で一歩を踏み出し、日本政府がこれを見守るのは、決して悪い方法ではない。韓国側が成功すればそれでよし、そのときには日本側は素直に歓迎し、協力すればいい。逆に失敗すれば、韓国側がもう一度案を練り直し、日本側と協議することになるだろう。そしてそれを両国が冷静に行えるなら、そのとき、われわれは初めて「歴史認識問題への向き合い方」を学んだことになるのかもしれない。

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プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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