コラム

日本の野党は「未来志向」の韓国選挙に学べ

2021年09月22日(水)15時58分

未来を感じる韓国の選挙(6月11日、最大野党の代表に選ばれた当時36歳の李俊錫=中央=)Kim Min-Hee-REUTERS

<アベノミクスをどれだけ批判しても、比較しうる「業績」がないのでは説得力がない。ならば代案や魅力的な看板政策を語ってはどうか>

日韓両国で政治が大きく動く時期である。日本において展開されているのは、言うまでもなく自民党の総裁選挙である。野党の低支持率が続く中、「事実上、次期首相を決める事になる」とまで言われるこの選挙に対するメディアそして世論の関心は極めて高い。

この様な与党党内の選挙に関心が集まる状況は、自民党総裁選挙に引き続いて、衆議院選挙を迎える日程の中、野党に深い焦燥感をもたらしている様に見える。つまり、新型コロナウイルス第5波の拡大により大きく支持率を失墜させた自民党が、この新たな総裁を選び出す過程において支持率を再び取り戻し、結果として、一時は目前にあるかにも見えた、自らの選挙における勝利が、遥か彼方へと遠のいてしまうのではないか、という焦りである。

そして、この様な中、第一野党である立憲民主党が9月21日に出したのが、第二次安倍政権以降、日本政府が行って来た経済政策、いわゆる「アベノミクス」に対する検証報告である。立憲民主党はここにおいてアベノミクスは失敗であったと、結論付け、与党自民党の経済政策を強く批判する事になっている。

「業績投票」頼りでは勝てない

筆者の専門は日本政治ではないので、ここでのこの検証報告の妥当性について議論しようとは思わない。しかしながら、この時期における検証報告の公表の背後に、与党の政策を批判する事により、その支持率回復を阻止し、来るべき衆議院選挙において有利な位置を占めようとする計算がある事は明らかだろう。そして、それは勿論、「悪い事」ではない。選挙において、政府や与党が実施してきた政策の是非を問うのは当然であり、検証報告により提供される情報は有権者にとっても有益だろう。

この様なそれまでの政権の政策への評価に基づく有権者の投票行動を、政治学の世界では「業績投票」という言葉で表現する。各党がマニフェスト等で掲げる「これからの政策」とは異なり、既に実施された政策については、その結果が目の前にあり、有権者はこれをある程度客観的に評価する事ができる。だからその方がより合理的であり、民主主義の望ましい姿だ、そう主張する研究者達も数多く存在する。

とはいえ「業績投票」の広がりと、それを利用した野党による現政権の「業績」に対する批判は、それだけでは必ずしも野党を浮上させる事にはならない。何故なら、どんなに与党の「業績」を叩いても、それだけでは野党が自ら政権を取った場合に、より良い「業績」を示す事が出来るかを示す事はできないからである。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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