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僕とクソダサいマイカップの抱腹絶倒で数奇な運命
数年前に僕は、ヨーロッパ周遊の大旅行をする時にこのカップを持って行くことにした。
たぶん途中でなくしたり壊れたりするだろうから、カップにとって、これが最後の外出になるだろうと思った。でもそうなっても構わない。むしろうれしいかも。
カップは無傷で家に帰った。電車で約1万1000キロ、そしてそれ以上の距離を3回のフェリー乗船で。バルト三国の4つの首都すべてを訪れた。
そこで、2回目の、さらに大規模な旅行でも再びやってみた。同じ理屈――これが最後の外出だ。
僕がこれまで訪れた中での最北端、ノルウェー西岸のベルゲンへ。そしてスペインのバスク地方にあるサン・セバスチャンにも。デンマーク東部のオーフスの旅ではおしゃれなシャツを、イタリアのローマではお気に入りのトレーニングウェアを、南フランスのアビニョンでは便利な「エバーシャープ」の小型キッチンナイフをなくしたが、このカップは生き延びた。
荒くれサッカーファンにからまれて
旅の途上で、カップが名声を得た瞬間もあった。僕はどういうわけか、何百人もの二日酔いのイングランドサッカーファンと一緒の電車に乗り合わせてしまった(イングランドとウクライナの試合があったが、ウクライナは自国で開催できずポーランドのブロツワフの競技場を借りていて、僕はちょうどポーランドにいた)。
僕とカップは、彼らの非公式マスコットのような存在になった。「こいつは旅行にカップなんか持ってきてるぞ!」「おい、カップガイ、ビールいかがですか?」「きっとやつがフラスコから注いでいるのはウォッカだぜ......カップの中身を見せて!?」
僕は彼らに、この愛されていない小さすぎる花柄の、コーヒーでも紅茶でも赤ワインでもなんでも用のカップを、むしろなくしてしまいたいくらいなんだ、と事情を話した。
「窓から投げ捨ててやるよ」と彼らは申し出た。「いや、自然死でなくちゃならない」と僕は彼らに言った。
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