コラム

煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄道網が次々と「再国有化」されている

2025年01月22日(水)18時55分

でも昨日、現在の民間鉄道システムがいかに狂っているかを改めて思い知った。僕は初めて訪れるイギリスの数都市への旅を予約したのだが、多種多様なチケットの配列と、各社それぞれ異なるシステムのさまざまな鉄道会社に混乱させられた。

ロンドンからマンチェスターまでの2時間のチケットが、アバディーンまでの7時間のチケットよりもたった2ポンド安いだけなんて、一体どうしてこうなるのか理解に苦しむ。

僕はマンチェスター行きの電車の選択肢を調べるのに1時間以上も費やした。「8.50ポンド安い始発電車に乗るために5時起きする価値はあるだろうか?」「なんで日曜だと予約できないんだ?ああそうか、ストライキか......」などなど。

その最中、おかしすぎる変則手段に気付いた。マンチェスターの1つ手前のクルーで降り、クルーからマンチェスターまで別の格安路線を使うと圧倒的に安くなるのだ。

チケット分割で安くなる謎テクニック

こういった現象はロンドンと北部を結ぶ路線の至る所で存在するようで、常連客にはよく知られているようだ。こうした抜け穴を利用する方法を知らなければ、それはある意味「無知の税」ということになる。

だから、それに気づいて、帰り道にこの方法を取ることにした自分にちょっとした満足を覚えていた。でも全ての予約を終えた後、好奇心からもう少し調べてみたところ、「チケット分割」として知られるこの不条理システムのとんでもなさをまだまだ理解していなかったことを思い知った。

僕は帰り用にマンチェスターからクルーまでの電車を予約し、そこで降りてロンドン行きの別の列車を待つのだが、多くの路線では電車を乗り換える必要さえないことが分かった。同じ電車を分割して2枚のチケットで買うことができ、1枚で買うよりも大幅に値引きされる。

異なる鉄道会社が鉄道網の別々の箇所を運営しているからこそ起こるある種のナンセンスであり、同一の当局だったらこんな方法を思いつきもしないだろう。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

任天堂、業績予想を上方修正 スイッチ2計画を190

ワールド

経済の不確実性高い、リスク下向き=フィンランド中銀

ワールド

米財務長官、関税巡る最高裁口頭弁論を傍聴へ トラン

ワールド

米国防長官、在韓米軍の「柔軟性」検討へ 米韓同盟で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story