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英サッカー選手のBLM膝つき行動は「自己表現」でも「勇気ある行為」でもない
奇妙なのは、人種問題で言えばサッカーは、目を見張るほど成功した分野であることだ。数多くの黒人選手が活躍していることや、彼らがあらゆる人種のファンからもてはやされていることからもそれが分かる。黒人選手はトップのクラブでプレーし、人口比からいえば不均衡なほど大勢がイングランド代表で活躍しているから、黒人スポーツ選手に人種差別があるとは考えづらい。
人種差別的なヤジは、1970年代、80年代のイングランドでは深刻な問題だったが、1991年に法律で禁じられた。違反したファンは今では刑事罰に問われ、観戦を禁止される。2018年に起こったバナナの皮投げつけのように、たまに人種差別らしき事件が持ち上がると大騒動になることから考えても、サッカーの試合から人種差別発言がほぼ消えたことは明らかだ。当時、メディアは激怒し、バナナの皮を投げた男は人種差別主義の意図を否定したにもかかわらず、逮捕された。
それと比較するとここ数年、監督に小児性愛者だと叫んだり選手の妻に卑猥な非難をしたりといった、でたらめで不快なヤジは、あまり騒ぎになっていない。
イギリスはこの数十年、人種差別問題で大きく進歩した。黒人警察官や黒人大卒者は増え、さまざまな人種の政治家がより高い地位に就くようになり、法律では人種差別発言が禁止され、人種以外の侮辱などに比べてより重い制裁を受けるようになった。BLM活動家はこうした成果を事実上無視し、イギリス社会は本質的に人種差別主義で白人たちはいつでも特権にあずかっているのだと、物議を醸す短絡的な主張をする。
サッカー選手がBLMの文字入りユニフォームを着て「膝つき」するとき、少なくとも彼らが、こうした思想を自らの名声を使って宣伝しているのだということを自覚していてほしいと願うばかりだ。
<本誌2021年1月12日号掲載>*一部加筆

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