コラム

ケント・ギルバート新著『プロパガンダの見破り方』はそれ自体が「陰謀論」

2020年04月09日(木)17時20分

日本のメディアが安倍政権に対してネガティブ一色になってしまう背景として本書が主張する「放送局内に反日勢力と共産主義者が入り込んでいる可能性」というのが、その典型だろう。陰謀論はあまりに分かりやすく安直なストーリーであるため、同じ価値観を共有する人々の間では盛り上がるが、異なる価値観を持つ人々との間では議論が成立しにくい。

プロパガンダを批判するつもりが、なぜか陰謀論に落ちていく。近年のケント本は陰謀論の一パターンとして読解すると、別の地平が見えてくるというのが私の見解だ。もっとも、こうした「どうしちゃったの?」と言いたくなる問題を抱えているのは、右派に限ったことではない。そこが、現代社会のなんとも難しいところである。

<本誌2020年3月31日号掲載>

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2020年4月14日号(4月7日発売)は「ルポ五輪延期」特集。IOC、日本政府、東京都の「権謀術数と打算」を追う。PLUS 陸上サニブラウンの本音/デーブ・スペクター五輪斬り/「五輪特需景気」消滅?

プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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