コラム

オンライン詐欺は「産業」になった...GDPの半分を占める闇経済と国家への浸透

2026年03月23日(月)18時42分

世界に広がる拠点

現在の中心はメコン川流域だが、アフリカ、中東、南アジア、バヌアツなど太平洋諸島など拠点は世界に広がっている。さらに、欧州の犯罪組織との提携も行い、国際的なネットワークを構築している。

世界各地での摘発がネットワークの拡大を示している。2023年後半にはナミビアで中国人、キューバ人、ナミビア人、シンガポール人のグループが逮捕された。

2024年初頭からアフリカ各地の法執行機関がオンライン詐欺グループを摘発した報告が出始めた。

2024年4月にはザンビアで詐欺シンジケートが摘発され、77人(22人は中国人)の容疑者が逮捕され、2024年後半にはアンゴラで大規模な捜索が行われ、オンラインギャンブル、詐欺、サイバー犯罪に関与した疑いで数十人の中国人が拘束された。また、ナイジェリアはアフリカに進出するアジアの詐欺ネットワークにとって重要な拠点となっていることが報告されている。

このほか、南アジア、南アメリカ、旧ソ連諸国などにも拠点が存在するほか、UAEのドバイはオンライン詐欺に関連した人材募集および人身売買の世界的な拠点になりつつある。

日本も例外ではない

前述のように日本人の被害も発生している。近年問題になっているトクリュウの一部は中国系オンライン詐欺グループとつながっている。そして、中国当局が地政学的意図を持ってこの犯罪集団を利用している可能性が高い以上、必要があれば日本に刃を向けるだろう。

問題は、実効性のある対処が難しいことだ。オンライン詐欺グループは国家が接点を持つハイブリッド脅威なのだが、同時に閾値以下の攻撃でもある。したがって、安全保障問題あるいは外交問題として政府が対応しにくい(本来はすべきだが)。そして、犯人が国外にいることから警察も対処が難しい。

拠点がある国は汚職が横行し、警察組織も当てにならない。近年、大きな摘発は行われているが、オンライン詐欺グループの拡大は続いていることから、政府や警察の体面を保つ程度の摘発にとどまっている可能性が高いと言われている。オンライン詐欺の狩り場になっているSNSなどを規制しようにも、ほとんどはアメリカ企業であり、言うことを聞かない。

ただし、日本だけがだめなわけではない。同様の問題はほかの国にもある。なぜならこの問題は、サイバー空間で自律的意思決定に基づく行動が取れないというデジタル主権の喪失と、迅速に横断的な対応を行えないという統治体制の根本的な問題に由来しているからだ。

これまでとは異なる視点とアプローチで対処する必要がある。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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