コラム

アメリカ発「陰謀論が主流に」──民主主義と情報の未来、日本は対岸の火事か?

2025年06月02日(月)20時26分

グローバルノースの民主主義国の人々は民主主義ではない国を「遅れている」と考えることが多いが、実態としては民主主義から権威主義へと変化した国の方が、権威主義から民主主義へ変わった国よりもはるかに多い。

多くの国が民主主義化を経て、非民主主義化しているのだ。民主主義の状態を示すデータと指標を公開しているV-Demでは、民主主義から権威主義への変化をベルターン、権威主義から民主主義への変化をUターンと呼んで分析している。


2024年の段階で、ベルターンの国は27カ国、Uターンの国は12カ国だった。2倍以上の開きがあるうえ、民主主義と権威主義の国の数では権威主義の方が多いのだから、それぞれの統治体制を母数として変化した国の割合にすると、この差はさらに大きくなる。

そもそも以前は民主主義国の方が多い時代があり、いまはそうではないのだから、「民主主義国が非民主主義になった」ことが原因なのは明らかだ。遅れているから民主主義のレベルに達していないのではなく、民主主義を経験し、なんらかの理由でそれを捨てたのである。

それでもいまだにグローバルノースの国々では民主主義が世界の主流、標準と思い込んでいる人々は少なくない。そのため実態としては非民主主義的な意見の方が多数を占めているにもかかわらず、グローバルノースの民主主義が主流という前提に立った発言を行う人が後を絶たない。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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