コラム

ドイツ極右、移民200万人を北アフリカに強制移住させる計画が暴露される

2024年02月27日(火)19時20分
ドイツの極右政党AfDへの抗議と民主主義の保護を求めるデモ

ドイツの極右政党AfDへの抗議と民主主義の保護を求めるデモ 2月25日ハンブルク REUTERS/Fabian Bimmer

<ヨーロッパ各国で農家の抗議活動が広がり、ドイツでは首都機能が麻痺する事態に。気候変動基金資金不足による補助金廃止が引き金となり、生活費上昇や気候変動対策への不満が背景にある。極右勢力がこれに乗じて支持を伸ばし、移民問題や政治不信が深刻化している......>

ヨーロッパに広がった農家の抗議活動

日本であまり報道されていないが、ヨーロッパで農家の抗議運動が広がっていた。フランス、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、ポーランド、スペインと野火のごとく燃え広がっていた。ドイツでは首都ベルリンの都市機能が麻痺する事態にまでなり、郊外の高速道路入り口と主要幹線道路は封鎖された。ただし、現地の市民たちには大きな反発はなく、支持している人が多いようだ。おそらく政府への不満を共有しているのだろう。

理由はいくつかある。ドイツでは気候変動基金に回す資金が足りなくなったことから70年以上続いていた農業用ディーゼル車に対する減税および補助金を廃止する決定をしたことがきっかけとなった。しかし、それだけが理由ではない。なぜなら今回廃止される補助金はそれほど多くの農家に影響を与えない。多くの農家が抗議活動を始めた背景には、生活費の上昇、気候変動への対処、移民問題、ウクライナ問題などさまざまな不満が鬱積していたことがある。さらに農家だけではなく、多くの市民に不満が広がっていたため、大規模な抗議運動への反発もほとんどなかった。

農家の反発は今年突然始まったわけではなく、2019年オランダでは、窒素排出量の規制のため政府が農場の閉鎖や飼育頭数の削減を行おうとして、農家から激しい抗議が繰り返された。2023年ベルギーでは同様の規制に対する抗議でブリュッセルにトラクターが押し寄せた。ヨーロッパ全土に広がる抗議活動をグローバリゼーションへの強烈な反対ととらえる識者もいる。

 
 

混乱に乗じる極右勢力

こうした御乱に乗じて支持を伸ばそうとしているのがドイツの極右政党AfDに代表される極右勢力である(なお、AfD自身は極右とは言っていない)。AfDにくわえて、The Third Way、The Free Saxons、The Homeland、クーデター未遂事件で世界的に有名になったライヒスビュルガー(帝国市民)も農家の抗議活動に参加している。

最近、世論調査で支持率2位に上昇したAfDは核となる主張を持たず批判に明け暮れていることは昨年のNewsweek記事で紹介されていたとおりだ。今回も網領に補助金廃止を謳っているにもかかわらず、補助金廃止を批判して農家の抗議活動を支持している。

昔のイデオロギーを優先する考え方からすると、ありえないと思うが、近年重要なのは「現在の体制への不満、怒り、批判、そして破壊」であり、そのあとのことや、思想は後付けでいいことになっている。そのため今回の抗議活動には極右の勢力、陰謀論、ポピュリストがこぞって参加している。悪いことに現在のドイツの連立政権の支持率はきわめて低い。

ネット空間でドイツの極右が取り上げるテーマは大きく反フェミニズム、反ユダヤ主義、気候変動、陰謀論、コロナ、差別など14に分けられることが、戦略的対話研究所(ISD)によって明らかにされている。この傾向はドイツ以外の国でも見られ、欧米に広がっている傾向と考えられる。以前の記事で紹介したアイルランドでも類似の傾向が見られた。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ、麻薬犯罪組織の存在否定 米のテロ組織指

ビジネス

英予算責任局、予算案発表時に成長率予測を下方修正へ

ビジネス

独IFO業況指数、11月は予想外に低下 景気回復期

ワールド

和平案巡り協議継続とゼレンスキー氏、「ウクライナを
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story