キーウに「最も寒く暗い冬」、ロシアの攻撃で停電長期化 耐える住民
1月18日、ウクライナの首都キーウで、自宅のアパートを暖めるために湯を沸かすアントン・リビコフさん。REUTERS/Anatolii Stepanov
Olena Harmash Anna Voitenko
[キーウ 21日 ロイター] - 雪を集めて生活用水にする。手袋やコート、帽子を着けたまま眠る。暖を取るためガスコンロでレンガを温め、さらには室内にテントを張る――。ウクライナの首都キーウの住民は、戦争で最も寒く、暗くなった冬を生き抜くために、ありとあらゆる手段を講じている。 「電気がなければ暖房も止まる。つまり、家全体が凍るということだ」と語るのは、3歳と2歳の子どもの父親のアントン・リビコフさん(39)だ。妻のマリナさんと共に、自宅には予備バッテリーや寝袋を備蓄している。 従軍牧師であるリビコフさんは、つい先日、ロシアの空爆による19時間超の停電で室温が9度まで下がり、息子の1人が肺炎になったと話した。 「精神的にもとてもつらい。心配が尽きない」と、金属製のミルク缶で湯を沸かす準備をしながら付け加えた。「この冬は特にひどい」 ロシアはここ数カ月、ウクライナのエネルギーインフラへの攻撃を強化し、キーウ、ハルキウ、ドニプロへのミサイル攻撃やドローン攻撃が集中している。 英国軍の情報当局は、2025年にロシアがウクライナに送り込んだ無人航空システムは5万5000機と推計している。Xに掲載された戦況報告によると24年の約5倍だという。 ミサイルとドローンの連続攻撃に対処するため、ウクライナは欧米に追加の防空システムを要請している。 雪に覆われたキーウでは気温がマイナス18度まで下がり、攻撃の影響で、住民300万人のうち数十万人が長時間の停電や断水に苦しんでいる。 ロシアの大規模攻撃があった翌日の20日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、市内の100万世帯以上が停電していると述べた。 シャワーを浴びたり料理をしたりといった日常的な行為でさえ困難になっている。政府は先週、全面侵攻開始からほぼ4年で初めて、エネルギー部門の非常事態を宣言した。
<「ウクライナ人の心を折る」攻撃> ロシアは、攻撃はウクライナ軍の能力を低下させることを目的としたもので、民間人を標的にしていないと主張している。 キーウのクリチコ市長はロイターに対し、首都への攻撃は「抵抗を打ち砕き、ウクライナ人の心を折り、人々を落胆させ、荷物をまとめてこの地を去らせる」ことが狙いだと語った。 「キーウはこれまでも、そして今も侵略者の標的だ」と、市長は自身の執務室でのインタビューで語った。 市内各地では、発電機で暖を取ったり携帯電話を充電したり、インターネットに接続できる、学校や路上の「不屈ポイント」と呼ばれる場所に、人々が集まっている。 米国を拠点とする支援団体「ワールド・セントラル・キッチン」のキーウの配給所では、年金生活者のキリヤコワさん(66)が孫娘と共に温かい食事を求めて列に並んでいた。 「文句は言いません」と語るキリヤコワさんの高層アパートは停電し、料理ができない状態にある。「戦争だから耐えないといけない。生き抜かないといけない」 ロシアのエネルギーシステムへの猛攻で、キーウでは停電や断水が例年より3-4倍長く続くようになっている。 ウクライナのソボレフ経済相によると、昨年10月以降、ロシアはウクライナの発電容量8.5ギガワット相当を破壊した。これは通常の電力需要のほぼ半分に相当し、過去最高の電力輸入を余儀なくされている。 ウクライナ国営ガス会社ナフトガスは、ロシアがウクライナのガス生産施設も攻撃したと述べた。中銀総裁は昨年末、ガス生産の約半分を失い、輸入負担が増していると明かした。 エネルギー系シンクタンク「ディクシ・グループ」の安全・レジリエンス部門長のラペンコ氏は、「ウクライナのエネルギーシステムは崩壊はしていないが、恒常的な劣化の状態で稼働している」と話した。
<エネルギー緊急事態> 学校や大学は冬休みを延長し、多くの企業はリモートワークに移行したり、営業時間を短縮したりしている。 修理チームはキーウ市内を駆け回り、ロシアの攻撃で損傷した設備を次々と復旧させている。 作業員のヘナディ・バルリンさん(55)は「仕事が山積みだ。一度にこれほどの負荷は送電網が耐えられない」と、停電箇所の修復作業をしながら語った。「冬真っ只中だ。地面やアスファルトを掘り起こすのは非常に難しい」 ソボレフ経済相は、エネルギー関連設備の備蓄が枯渇しており、現在の危機に対処するには10億ドル規模の支援が必要だと述べた。 ウクライナ外務省によると、西側諸国は発電機や大容量バッテリー、産業用ボイラーなど数百台を緊急供与している。 任命されたばかりのシュミハリ・エネルギー相は、旧ソ連時代の中央集約型システムへの依存を減らすため、小規模で独立した発電設備の導入が一定の進展を見せていると述べた。25年に762メガワットを設置し、24年の225メガワットから増えたという。 しかし、「エネルギー部門の危機的状況を踏まえると、このペースでは明らかに不十分だ」と語った。 シュミハリ氏はまた、キーウは他都市に比べて独立電源設備の導入が遅れていると指摘したが、市長はこれを否定した。 今後数週間は厳しい寒さが続く見通しで、ロシアの追加攻撃も予想されることから、専門家は事態の早期改善は見込めないとみている。 冒頭のリビコフさんは、停電がさらに悪化すれば子どもをキーウから退避させることを検討すると話した。 「他のことは耐えられる。だが、子どもたちを凍えさせるわけにはいかない。停電が続くようなら避難させる」
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