アングル:中国企業、希少木材や高級茶をトークン化 RWA市場急成長
写真は、上海ティークン・テクノロジーズの創業者兼最高経営責任者(CEO)のエリック・マー氏がアプリで茶を読み取る様子。12月15日、上海で撮影。Reuters/Go Nakamura
[18日 ロイター] - 中国南部の海南島では、黄花梨と呼ばれる希少なローズウッドの樹木を撮影し、デジタル資産に転換する取り組みが進んでいる。
黄花梨は美しい光沢と黄金色の木肌を持つ。かつて中国の皇帝に愛されたこの木材は今も高値で取引されるが、成長には数十年を要し、農家の忍耐が試される。
黄花梨を実物資産(RWA)の取引可能なトークンに転換すれば、資金繰りに課題を抱える業界に資本を呼び込める――中国自動車大手、吉利汽車(ジーリー)の傘下である吉利科技集団の海南担当者、ジャオ・シャオバオ氏はこう話す。
ジャオ氏は「貴重な木材という眠れる資源を取引可能な資産に変えている」と述べ、トークン化のビジネスモデルは林業を一変させ、「緑の山と綺麗な水を、金や銀に変えられる」可能性があると付け加えた。
同社は今後数カ月以内に香港でトークンを発行し、最初の回で1億香港ドル(約20億円)を調達する計画だ。木はそれぞれ大きさや品質に応じて異なる価値が割り当てられ、それを複数のトークンに分割する。
<高級酒や骨董品も対象>
ジャオ氏は、この計画が生物的な性質を持つ取引可能な実物資産(RWA)をトークン化する世界初の事例になり得るとみている。
希少な木材だけではない。高級茶葉から高額な白酒まで、さまざまな中国の商品がデジタル資産へと転換されつつある。
「骨董品、コレクターズアイテム、データ資産、コモディティー、不動産――こうした資産をどうトークン化するか、多くの問い合わせを受けている」と、盈科法律事務所の弁護士、リャオ・レンリアン氏は先月のセミナーで語った。
多くの中国企業は、香港で昨年から開かれた新たな資金調達の道に期待を寄せているが、ブロックチェーンを使ったRWAトークン化はまだ初期段階だ。特に供給の急増に対し、需要が十分にあるかは不透明だ。中国本土からの投資に制限があるためだ。
「資産の数が、買い手となる投資家の数を大きく上回っている。投資家層を広げる必要がある」と、タドウィル・アンド・カンパニーのマネージングディレクター、エリック・ズオ氏は語った。
ズオ氏は、四川省にある破綻した水力発電ダムを香港でデジタルトークン化し、5億2300万元(約116億円)を調達するプロジェクトに取り組んでいる。
<中国本土をめぐる懸念>
データ提供会社RWA.xyzによると、世界のRWA市場は過去1年で115%拡大し、357億ドル(約5兆5700億円)に達した。RWAトークンの裏付け資産は主に債券や株式、不動産などの伝統的な金融資産で、米国債が大半を占める。
香港は中国本土とは異なる自由度の高い経済制度を運営しており、デジタル資産を積極的に受け入れ、アジアの金融ハブとしての地位を高めようとしている。
しかし2021年に暗号資産の取引を禁止している中国当局は、こうした動きを懸念している兆しもある。
情報筋によると、中国証券監督管理委員会(CSRC、証監会)は今年、一部の中国本土の証券会社に対し、香港でのRWAトークン化事業を停止するよう非公式に助言した。
ただし、本土の市民も香港の証券会社に口座を持てば、RWAトークンを取引できる。
見解を求めたところ、CSRCは12月5日に同委員会および他の金融当局が公表した声明を示した。それによると、ステーブルコインやエアコイン、RWAトークンの台頭を悪用する犯罪が増えており、本土企業はこうしたサービスの提供を禁止されている。
これに対し、香港証券先物委員会(SFC)は、証券または先物契約に該当するトークン化商品は、既存の規則の対象になるとの立場を示した。
「規制当局はRWAを使って違法に資金を集める詐欺師を狙っている」と、上海のマン・クン法律事務所の創業者、リウ・ホンリン氏は述べ、プロジェクトが規制に適合し、消費喚起に使われるのであれば「問題はないと思う」と付け加えた。
<友人への贈り物はデジタル茶>
上海のスタートアップ、上海ティークン・テクノロジーズは、発酵茶であるプーアル茶の塊のデジタル資産を発行した。ワインと同様、この種類の茶は熟成するほど価値が上がり、長期投資に適している。
ブロックチェーン技術は、偽装が横行する業界にデジタル認証をもたらす。これまでは、例えば5年物の茶が10年物として販売されることもあったと、創業者兼最高経営責任者(CEO)のエリック・マー氏はロイターに語った。
「コレクターが安全に所有し、共有し、場合によっては高品質の茶を透明性と信頼をもって次世代に引き継げるプラットフォームを構築したい」とマー氏は述べ、同社は茶を保管する最新設備のセラーを提供すると付け加えた。
広告業界で働く福建省アモイ出身のジュノ・ジューさん(27)は、1枚700元(約1万5500円)のデジタル茶を100枚購入し、コンプライアンスの側面での懸念はないと語った。
「価値のあるものに裏付けられている。無から生まれたトークンではない」とジューさんは述べ、一部を友人への贈り物として渡したという。
その他の例として、中国奇点国峰控股は、白酒62トンをRWAプロジェクトの裏付け資産にしたと発表した。このプロジェクトは主要株主が手掛け、5億香港ドルの調達を目指している。





