台湾巡る高市氏の国会質疑、政府が事前に「問取り」 立憲は首相の責任指摘
写真は高市首相。国会で10月撮影。REUTERS/Kim Kyung-Hoon
Tamiyuki Kihara
[東京 12日 ロイター] - 台湾有事を巡って高市早苗首相が「存立危機事態になり得る」などと答弁した11月7日の衆院予算委員会に先立ち、政府が質問者の岡田克也元外相(立憲民主党)から質問内容を聞き取って想定問答を作成していたことが明らかになった。政府は問題となった首相答弁の部分については「質問通告がなかった」と説明しているが、立憲側は「首相の持論が展開された」と指摘。日中関係の悪化を招いた責任を追及している。
同答弁の背景について立憲民主党の辻元清美参院議員が政府に質問書を提出。その回答内容やロイターの取材で判明した。
岡田氏は予算委を前に政府側へ「質問要旨」を出しており、そこには「総理の外交基本姿勢」「存立危機事態」「在日米軍基地からの直接出撃」「川崎重工事件」の四つが箇条書きにされていた。
辻元氏によると、内閣官房の担当者らは「質問要旨」を受け取った後、岡田氏を訪ねて質問予定の内容を口頭で聞き取る「問取り」を実施。岡田氏は中国による台湾の海上封鎖について高市氏が触れた過去の発言を引き合いに「最終的に海上封鎖がどのようになった場合に存立危機事態になり得るのか」「存立危機事態の認定の可能性を軽々に言うのはいかがなものか」などと問う予定であることを伝えた。岡田氏の事務所はロイターの取材に、「問取り」が予算委2日前の11月5日にあったと説明した。
内閣官房はこうしたやり取りを基に、岡田氏の質問とそれに対する答弁案を作成。「台湾有事」への言及を控えることなど、歴代政権の立場を踏襲した想定問答をまとめた。担当者は取材に、想定問答が予算委当日までに高市氏側へ渡っていることを認めた上で、「基本的には首相も(想定問答を)確認していると考えてもらっていい」と話した。
一方、同担当者は「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考える」などとする問題の答弁については、「問取りを含む事前の通告にはなかった質問に対して首相が答えたものだ」とし、作成した答弁案には入っていなかったと説明。「首相は繰り返し『実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府がすべての情報を総合して(存立危機事態かどうかを)判断する』と明確に答弁しており、政府のこれまでの見解に変わりはない」とも述べた。
一連の経緯について辻元氏は12月12日、記者会見を開き「(問題の答弁は)首相の持論が展開されたものであり、歴代政府の見解から逸脱していることが明らかになった」と指摘。「その結果、対中関係が緊張し、軍事的緊張、経済的な損失にもエスカレートしている」とした上で、「政治は結果責任だ。(日中関係悪化という)現状を招いた首相自身の責任は重い」と語った。
問題となった高市氏の答弁後、中国側は外交ルートを通じて繰り返し発言撤回を求めているほか、国民に訪日自粛を呼びかけるなど反発を強めている。防衛省は12月6日、中国軍機が沖縄本島南東の公海上で自衛隊機にレーダーを照射したと発表。日本政府内には高市氏の発言との関係を指摘する声もある。
(鬼原民幸 編集:久保信博)





