アングル:FRB次期議長、インフレと利下げ要求の板挟みに
写真は米FRB。2022年6月、ワシントンで撮影。REUTERS/Sarah Silbiger
Howard Schneider
[ワシントン 8日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB) が9─10日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)を機に、次期議長人事の予想が活発化し、委員らはインフレ懸念とトランプ米大統領による利下げ要求の板挟みになりそうだ。
今週のFOMCでは0.25%幅の利下げが確実視されているようだ。しかしFOMC後の声明と、同時に発表される経済見通しによって、次期議長体制が追加利下げに反対姿勢か、それとも前向きなのかが示されるだろう。
来年の議会中間選挙を控え、トランプ氏は特に住宅セクターを押し上げて家計の懸念に対処するために利下げを求めている。しかしエコノミストによると来年の経済成長は底堅く、税還付により個人消費は支えられ、インフレ圧力は根強い見通しなので、利下げすればインフレをあおりかねない。
BNPパリバの首席米国エコノミスト、ジェームズ・エンゲルホフ氏は、来年のインフレ率を3%と予想し、今週の利下げに次いで来年はあと1回の追加利下げにとどまると見ている。「データによると、積極的な利下げの必要性は乏しい」と同氏は述べた。
つまり次期FRB議長もパウエル現議長と同じく、トランプ氏の利下げ要求と現実の経済・物価状況の間でジレンマに陥りそうだ。
今週のFOMCでは、利下げに対して複数の反対票が出る可能性がある。声明とともに発表される委員による来年の金利、物価、失業率見通しを見れば、こうした対立が次期体制でどの程度継続しそうかが分かるかもしれない。
パウエル氏の任期満了を来年5月に控え、トランプ氏は来年初めに次期議長を指名すると述べている。
最有力候補とされる国家経済会議のハセット委員長は、人工知能(AI)による生産性の向上によってインフレリスクが低下し、経済成長が加速する中でも利下げが可能になるかもしれない、との見方を示している。
しかしシティグループのグローバル首席エコノミスト、ネイサン・シーツ氏は、FRBが次期議長の下で過度に積極的な利下げを実施すれば、逆効果を招きかねないと指摘する。
シーツ氏は、市場が正当と考えるよりも積極的な利下げをFRBが行えば「市場は『インフレ的だ』と言って、住宅ローン金利を含む長期金利を押し上げるだろう」と警告。「今より政権と緊密なFRB議長が任命され、大統領、そして中間選挙のために経済を強くしたいなら、その方法はイールドカーブの端(長期金利)を急上昇させることではない。(中略)そんなことをすれば、住宅市場を締め付けてしまう」と述べた。
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