ニュース速報
ワールド

アングル:高市新総裁、政治空白の解消急務 「ハネムーン」期間なし 

2025年10月04日(土)17時46分

高市早苗前経済安全保障相が新たな自民党総裁に選出され、今月中旬にも新政権が発足する。写真は10月4日、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takaya Yamaguchi Kentaro Sugiyama

[東京 4日 ロイター] - 高市早苗前経済安全保障相が新たな自民党総裁に選出され、今月中旬にも新政権が発足する。初の女性首相という追い風も手伝い、自民党政権への支持回復が見込まれるが、政権発足当初100日間の「ハネムーン(蜜月)」期間を楽しむ余裕はなさそうだ。7月の参議院選挙で敗北して以降続いた政治空白を、連立拡大を模索しながらいかに早く埋め、物価高対策を含む予算編成にどうこぎ着けるか、年末にかけ難路を迎える。

<近く経済対策策定へ>

「新たな首相にハネムーン期間はない」――。複数の政府関係者はこう口をそろえる。

新総裁に選出された高市前経済安保相は、立候補した5人の中で、小泉進次郎農林水産相とともに有力視された候補者だった。物価高に対処する経済対策の速やかな策定に向け、「まずは目の前にある課題への取り組み方が、その後の政権運営を占う試金石」と、政府関係者の1人は言う。

複数の政府、与党関係者によると、石破茂首相の後任を決める臨時国会は15日にも召集される。衆参両院で少数与党の状況だが、野党の一本化協議は不調で、高市氏が首相に選出される公算が大きい。

首相に指名されれば速やかに新内閣を発足し、20日前後に所信表明演説を行う段取りを描く。物価高に負けない賃上げ定着に向け、効果的な経済対策の柱だてを訴えられるかが焦点となる。

<見えない連立構想>

自民党が参院選で主張した現金給付案は7月以降、宙に浮いた。物価高対策を巡る2カ月以上の政治空白を受け、政府内の一部からは「物価の番人(である日銀)に委ねればいい」(前出と別の幹部)との声もあった。

新政権には、こうした状況をどう打開するかが問われる。

総裁選に先立ち、自民、公明、立憲民主3党は、石破政権下で給付付き税額控除を巡る協議を矢継ぎ早に重ねてきた。総裁選を通じ高市氏も税控除の必要性を訴えており、「基本政策が合致する野党とは連立したい」との考え。とはいえ、連立協議を巡っては「どの政党と組むのか全く見えてこない」(首相周辺)との声が残る。

日本維新の会は、打診があれば連立協議に応じる構えだが、党内には内部対立もある。党勢拡大を優先する国民民主党も、容易に連立参加を決断できる状況にはない。

<勝負の3カ月>

先行きの政策運営を巡り、政府内では「政策連携だけはやめてほしい」(複数の関係者)との声が根強い。

2024年10月に発足した石破政権下では、予算編成に苦戦した。野党との協議を重ね、2度の予算修正を経て年度末ぎりぎりの成立にこぎ着けた。「文部科学や厚生労働予算は大方針のない継ぎはぎ。財務省も頭を痛めているのでは」(別の幹部)との声もある。

自民総裁選に先立ち、政府は、賃上げを起点に名目1000兆円経済を目指す新方針を掲げた。「減税政策よりも賃上げ政策」をスローガンに、経済政策を前に進める構えだ。

こうした方針を実現できるかは「向こう3カ月が勝負の期間」(前出と別の幹部)。新総裁には、年末の予算編成過程で野党との信頼関係を築き、予算案の国会審議と併せ、新たな政権の枠組みを構築できるかも求められる。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

自民党総裁に高市氏、初の女性 「自民党の新しい時代

ワールド

自民党の高市新総裁、金融政策の責任も「政府に」 日

ワールド

高市自民新総裁、政策近く「期待もって受け止め」=参

ワールド

情報BOX:自民党新総裁に高市早苗氏、選挙中に掲げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中