スイスの経常黒字が半減、トランプ関税巡り金輸出に異変

スイスの2025年第2・四半期の経常黒字が半分以下に減少したことが、23日発表のデータで明らかになった。写真は2014年11月、ベルンで撮影(2025年 ロイター)
John Revill
[チューリヒ 23日 ロイター] - スイスの2025年第2・四半期の経常黒字が半分以下に減少したことが、23日発表のデータで明らかになった。トランプ米大統領の予測不能な貿易政策が年初の金輸出に大きな変動を引き起こしたためだ。
スイスは世界の金生産量の約3分の1を精錬・輸送する中心地。年初に金の輸出が急増した。米政府が金輸入に関税を課すリスクに備え、市場関係者がコメックスのポジションをヘッジしたため、数十億ドル相当の金がスイス、英国などから米国に輸出されたためだ。
このリスクは4月に米政府が金を関税の適用対象外としたことを受けて消滅。これを受け、一部の金が米国からスイスや英国に還流した。
この結果、スイス国立銀行(SNB)のデータによると、スイスの第2・四半期の経常黒字は100億スイスフラン(126億ドル)と、前年同期の250億スイスフランから急減した。
SNBは「金取引の代金の受け取りと支払いの双方がこの期間に大幅に増加したが、増加幅は代金の支払いの方が著しく大きかった」と述べた。
SNBのデータによると、スイスは第2・四半期に金輸出で282億スイスフランを受け取った一方、支払いは380億スイスフランに達し、97億スイスフランの赤字となった。
UBSのエコノミスト、マキシム・ボッテロン氏は、第2・四半期の急激な黒字減少は懸念要因ではないとし、長期的な動向により注目していると発言。
「年初は特に金関連で変動が大きかったが、今は状況が落ち着いてきているようだ。このため、今後は金関連の要因は小さくなるだろう」と述べた。