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トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災害」と大統領

2025年08月30日(土)09時14分

米首都ワシントンの連邦巡回区控訴裁判所は29日、トランプ大統領の関税の大半が違法との判決を出した。写真は相互関税を発表するトランプ氏。4月2日、ワシントンのホワイトハウスで撮影(2025年 ロイター/Carlos Barria)

Dietrich Knauth Nate Raymond

[ニューヨーク 29日 ロイター] - 米首都ワシントンの連邦巡回区控訴裁判所は29日、トランプ大統領の関税の大半が違法との判決を下した。政権が連邦最高裁判所へ上訴する機会を与えるため、10月14日までは関税を維持することを認めた。

トランプ大統領は自身が運営する交流サイトに投稿し、「極めて党派的」な裁判所の決定を批判した。「関税がなくなれば国にとって完全な災害となる」とした上で、「最高裁の助けを借りて」関税が国に利益をもたらすことを期待していると書き込んだ。

控訴裁が取り上げたのは、トランプ大統領が4月に発動した相互関税と、2月に中国、カナダ、メキシコに対して発動した関税の合法性。大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき関税を課す権限はないなどとした。鉄鋼とアルミニウムへの課税など、他の法的権限に基づいて発動された関税には影響しない。

判決は7対4だった。民主党政権下で選ばれた判事のうち、6人が賛成、2人が反対した。共和党政権下で選ばれた判事のうち、1人が賛成、2人が反対した。

商務省の元高官で、現在は戦略国際問題研究所(CSIS)上級研究員のウィリアム・ラインシュ氏は、トランプ政権はこの判決に備えていたと指摘する。「政権はこの結果を予期しており、代替案を準備していることは周知の事実だ。他の法令によって関税を維持するのだろう」とみる。

時間外取引で株式市場はほとんど反応しなかった。

ライリー・ウェルスのチーフ・マーケット・ストラテジスト、アート・ホーガン氏は、「市場も米企業も、通商をめぐってこれ以上の不確実性を求めることはない」と話す。

連邦控訴裁は、米国の中小企業5社による提訴と民主党の地盤が固い12州による提訴について判決を下した。

ニューヨークの国際貿易裁判所は5月下旬、大統領の権限を逸脱しているとして一連の関税の大部分を差し止めた。憲法は他国との通商を規制する独占的な権限を議会に与えており、米経済を守るという大統領の緊急権限によってこれが覆されることはないとした。トランプ政権は直ちに控訴した。

控訴裁とは別のワシントンの裁判所も、トランプ政権が根拠としたIEEPAは大統領による関税措置を認めていないとの判決を下した。政権は同判決にも控訴した。

ロイター
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