マクロスコープ:外国人労働者、特定産業で100万人超へ 参政党躍進で問われる政府方針

日本の生産年齢人口が減少をたどる中、政府が外国人を労働力として「確保」する政策を進めている。写真は都内の建設現場。2022年2月、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Tamiyuki Kihara
[東京 14日 ロイター] - 日本の生産年齢人口が減少をたどる中、政府が外国人を労働力として「確保」する政策を進めている。2028年度末までに、特定産業分野に従事する外国人は100万人を大きく超える見通しだ。一方、20日投開票の参院選では、過度な受け入れに否定的な政策を掲げる政党が勢いづいている。人材確保による経済的メリットと国民感情は、果たして折り合うのか。
「日本の国は日本人の力で運営していきたい」。参院選で躍進を狙う参政党の神谷宗幣代表は3日、日本外国特派員協会の記者会見で、党の基本方針をこう説明した。
神谷氏は、仮に日本の人口が8000万人に減ったとしても社会活動は「十分に回せる」と主張。外国人労働者の受け入れについては、「(日本人の)若い労働力の足りないところに外国人労働者の力を借りたい」とし、「減っていく(日本の)労働力を、外国の安い労働力で埋める考え方は違う」と述べた。「外国人排斥を考えているわけではない」としつつ、あくまで「(滞在)期間を区切った労働力」として考えるべきだとも語った。
一方、2024年時点で永住者や学生のアルバイトを含めた外国人労働者の総数は約230万人に上る。そのうち、政府は28年度末までに、特定産業分野に従事する外国人労働者を大きく増やす方針だ。
特に働き手不足に悩む工業製品や飲食料品の製造業、介護といった産業に焦点を当て、継続的な労働力の確保を目指している。
具体的には、24年に改正した出入国管理及び難民認定法(入管法)などに基づき、これまで「母国への技術の持ち帰り」による国際貢献を目的としていた技能実習制度を抜本的に見直した。「人材の育成・確保」を目的に育成就労制度を創設し、27年4月から運用を始める予定だ。
加えて、既存の特定技能制度の対象となる産業分野を16から19に拡大する方向でも検討している。19分野のうち17分野は育成就労制度でも対象とする方針で、実現すれば多くの外国人を日本国内で育成し、人手不足の産業で働いてもらうスキームが整うことになる。
育成就労制度の大きな特徴は、要件を満たせば特定技能の在留資格を得られることだ。問題なく一定期間働くことなどの条件をクリアして「特定技能2号」が付与されれば、在留期間の更新に制限がなくなる。
政府の計画では、28年度末までに既存の特定技能制度を利用する外国人の受け入れ見込み数は82万人。出入国在留管理庁(入管庁)の担当者は、「育成就労制度で在留資格を得る人を加えれば、28年度末には100万人を大きく超える規模になるだろう」と話す。
政府が外国人労働者の受け入れを急ぐ背景には、生産年齢人口の減少に加え、韓国など近隣諸国との「獲得競争」がある。
もともと、アジアの先進国として治安の良さや高賃金を売りにしてきた日本だが、24年9月時点の最低賃金は1055円。韓国の1103円(1ウォン=0.11円で計算)を下回る水準だ。
円安傾向も追い打ちをかけ、入管庁によると、近年はベトナムやインドネシアから韓国へ働きに出る人の伸びが目立つという。政府関係者は「韓国は国を挙げて外国人材の獲得に動いた。その部分では日本は後れを取っている」と話し、政策推進の意義を強調する。
<参政党は「育成制度見直し」主張>
ただ、参院選の結果次第では、こうした政府方針にも影響が出かねない。実際、参政党は選挙公約に「目先の人材不足を補うための行き過ぎた外国人労働者流入を抑える」と明記。単純労働者の受け入れ人数の制限や、永住・家族の呼び寄せ条件の厳格化など、特定技能、育成就労制度の見直しも掲げている。
前出の政府関係者は「きちんとやっている外国人を大事にするという軸を外れてはいけないと感じる」とし、「今後はこれまで以上に共生のための環境整備が必要になってくる」との認識を示した。
外国人材の受け入れ拡大による日本経済への影響について、専門家はどう見ているのか。
SMBC日興証券エコノミストの野田一貴氏は「日本社会が人口減少に直面している中で、外国人労働者の確保は人手不足の緩和につながる。実態として建設現場などは働き手不足が深刻だ。日本政府が外国人受け入れに動くのはやむを得ないし、人材確保はマクロの視点で言えばプラスの面が大きい」とみる。
一方で、「他の先進国では移民問題は様々な衝突を生んでいる。欧米では国民の分断や政治の不安定化につながっている部分もある。日本では、外国人労働者に雇用を奪われるというよりも、治安や地価高騰など、生活を圧迫されているという感覚が国民に広がっているのではないか。参院選での参政党の躍進もその表れかもしれない」と指摘。
「深刻な人手不足にあえぐ日本社会において、外国人を全く受け入れないという発想は現実味に欠く。治安対策や住宅政策など各論で不安解消を図りつつ、外国人と共生する社会の実現を目指していく方向性が妥当ではないか」と話す。
※参政党以外の主要政党の主な参院選公約(在留外国人に関する政策)は以下の通り。
・自民党
外国人による運転免許切替手続きや不動産所有などの諸問題について、法令に基づいて厳格かつ毅然として対応。「違法外国人ゼロ」に向けた取組みを加速化。育成就労制度開始やインバウンド増加等を踏まえ、円滑かつ厳格な出入国在留管理と、それに必要な体制整備を進める。
・公明党
ルールに基づく受け入れと違反者への厳正な対応を徹底し、公正で適正なルールを創る。社会保険料未納防止、在留管理高度化、育成就労・特定技能制度で人権保護などを図る。日本語教育や就労支援を強化し、多文化共生を日本の活力につなげる。
・立憲民主党
「多文化共生社会基本法」を制定し、国民及び在留外国人が、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生することのできる社会を形成。外国人一般労働者雇用制度の整備を推進する。
・日本維新の会
外国人の無秩序な増加や地域摩擦の弊害を踏まえ、外国人比率の上昇抑制や受け入れ総量規制を含む人口戦略を策定し、司令塔機能の設置及び基本法の制定により、外国人政策を国家として一元管理する。
・国民民主党
育成就労制度は安価な労働力の確保策として悪用されないよう、厳格かつ適切な運用を求める。来日する子どもや家族の日本語習得や日本の歴史・文化、制度等への教育、学校での学習機会の確保等、国が主体的な対策を講じるよう取り組む。
・共産党
「特定技能」新設は、外国人労働者の劣悪な労働実態を放置したまま受入れを拡大するものだ。外国人労働者問題に求められているのは、基本的人権が保障される秩序ある受入れと、共に生活するための支援体制だ。入管法の抜本的改正を求める。
・れいわ新選組
自公政権の「移民政策」は、日本の労働者の賃金下押し圧力として確実に機能している。主に外国からの低賃金労働力の導入が目的。本来は母国の繁栄に力を尽くす人材を、他国から奪い続けていることを自覚すべき。
(鬼原民幸 グラフィックス作成:照井裕子 編集:橋本浩)
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