ニュース速報
ワールド

ロシア国際経済フォーラム、欧米勢不在で経済復活への望み乏しく

2025年06月20日(金)10時04分

 6月19日、 ロシアのサンクトペテルブルクで年次の「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」が今週開催されているが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて欧米の投資家はほとんど参加しておらず、ロシア経済復活への望みは乏しい。同フォーラムの会場で撮影(2025年 ロイター/Anton Vaganov)

[サンクトペテルブルク(ロシア) 19日 ロイター] - ロシアのサンクトペテルブルクで年次の「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」が今週開催されているが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて欧米の投資家はほとんど参加しておらず、ロシア経済復活への望みは乏しい。

侵攻を受けて西側諸国はロシアへの制裁を強めるとともに、広範囲に及ぶ企業流出を引き起こした。中央銀行の統計によると、ロシアでの外国からの保有資産は5960億ドルと侵攻後にほぼ半減。国連貿易開発会議(UNCTAD)が19日発表したデータによると、24年のロシアへの直接投資流入額は前年比62.8%減の33億5000万ドルに落ち込んだ。

戦闘による国防費支出がロシアの2兆ドル規模の経済を支えており、ロシアは中国、インド、トルコ、中東諸国などのいわゆる「友好国」との連携を進めている。

元ロシア中銀副総裁で、現在はロシア国外に住んでいるセルゲイ・アレクサシェンコ氏はロイターに対し、戦闘が終結してもロシアを投資先として真剣に検討する企業はほとんどないだろうとして「財産権を巡る状況が日々悪化していることは誰の目にも明らかだ」と語った。

プーチン大統領はロシアの国家安全保障が危険にさらされる場合だけに国が資産を差し押さえるべきだと訴えている。そんな中でロシア政府は過去3年間に10を超える外資系企業を差し押さえ、国内の資産差し押さえのペースを速めた。モスクワの裁判所は、モスクワ近郊にある民間所有のドモジェドボ空港の所有権を国に移管する判断を下した。

アレクサシェンコ氏は「停戦しても、政治的リスクのレベルが大きく下がるわけではない」として市場リスクがあることも指摘した。

<PRではなく政府との関係構築>

サンクトペテルブルク国際経済フォーラムに参加したロシア人は「本当の問題は、投資家はどこにいるのかということだ」と語った。

西側諸国の制裁措置によってロシアへの投資は不可能に等しいものの、トランプ米大統領がロシアへの姿勢を軟化させたことで一部の投資家はチャンスをうかがうようになった。

18回目の参加となった金融コミュニケーション企業、EMのマネジングパートナー、デニス・デニソフ氏はロイターに対して「西側諸国がフォーラムに足を運んだのはロシアの規模が大きく、経済が成長し、収益を上げていたからだ」とした上で、「これらの3つの要素はそうそう見つかるものではない」と言及した。デニソフ氏は、大部分の参加者は政府との関係構築を進める機会として活用しており、PRが目的ではないと話した。

デニソフ氏は「(在ロシア)米国商工会議所はロシアと米国のパネルディスカッションを強く推進しており、ロシアで引き続き事業運営をしている欧州企業もたくさんある」とし、「彼らはここで静かにロビー活動をしている」と解説した。

在ロシア米国商工会議所のロバート・エイジー会頭は、米国企業がロシアへの復帰を検討するにはウクライナでの戦闘に何らかの終止符を打つ必要があると述べた。

米ペプシコやモンデリーズ、スイスのネスレなどの多国籍企業は侵攻があった後にロシアでの事業を縮小したものの、現在も運営を続けている。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは145円前半でもみあい、中東緊迫小

ワールド

中国、中部と南部で洪水警報 今年初の「赤色」

ビジネス

孫ソフトバンクG社長、米にAI拠点構想 TSMCと

ワールド

ガザ市民、命がけの食料調達 「食べ物を持ち帰るか、
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 3
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 4
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 5
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 6
    全ての生物は「光」を放っていることが判明...死ねば…
  • 7
    マスクが「時代遅れ」と呼んだ有人戦闘機F-35は、イ…
  • 8
    下品すぎる...法廷に現れた「胸元に視線集中」の過激…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中