ニュース速報
ワールド

米、中東の一部職員退避へ イランとの緊張高まる

2025年06月12日(木)09時30分

在イラク米大使館は、地域的な安全保障上のリスクが高まっているとして避難命令を出す準備を進めている。2022年8月、イラクの首都バグダッドで撮影(2025年 ロイター/Thaier Al-Sudani)

Daphne Psaledakis

[バグダッド/ワシントン 11日 ロイター] - トランプ米大統領は11日、中東が「危険な場所になる可能性がある」ため、米国の職員を中東から移動させていると発言、米国はイランの核兵器保有を認めないと述べた。

これに先立ち、ロイターは米国とイラクの関係筋の話として、中東地域の安全保障上のリスクが高まっていることから、米国が在イラク大使館職員の一部退避を準備しており、中東各地から軍人の家族が退去することを許可すると報じていた。

これらの関係筋はどのような安全保障上のリスクが避難の決定を促したのかを明らかにしていない。

報道を受けて、原油価格は4%以上急騰した。

米当局者は、国務省がバーレーンとクウェートからの自発的な出国を許可したと述べた。

トランプ大統領は、停滞する核開発計画協議が失敗に終わった場合にはイランを攻撃すると繰り返し警告している。11日は、米国の主要な要求であるウラン濃縮の停止にイランが同意するかどうかについて、自信が薄れつつあると述べた。

トランプ氏は記者団に「危険な場所になる可能性があるため、移動させている。様子を見守ろう」とし「移動するよう通知した」と述べた。

中東の緊張緩和に向けて何かできないのかとの質問には「彼らは核兵器を持つことはできない。非常に単純な話だ。彼らは核兵器を持つことはできない」と答えた。

イランのナシルザデ国防軍需相はこの日、米国と6回目の核協議が予定される中、交渉が頓挫し、米国との間に紛争が生じた場合、イランは地域の米軍基地を攻撃すると述べた。

米国はイラク、クウェート、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)に基地を置いており、主要な石油生産地域に軍事プレゼンスを持っている。

米当局者によると、ヘグセス国防長官が中東各地から軍人の家族の自主退去を承認した。別の当局者によると、主に駐留規模の大きいバーレーンからという。

3人目の米当局者は「国務省はバグダッドの米国大使館への退去命令を出す予定だ。民間の航空便で退去させるつもりだが、支援要請があれば米軍も待機している」と述べた。

イラク外務省当局者は、米国大使館職員の「一部避難」が確認されたと述べた。

イラクの国営通信社は政府筋の話として、バグダッドでは避難を必要とするいかなる治安上の兆候も記録されていないと伝えた。

別の米当局者は、中東最大の米軍基地であるカタールのアル・ウデイド空軍基地の運用に変更はなく、カタールの米大使館関係者や家族に避難命令は出されておらず、大使館は通常通り機能していると述べた。

ホワイトハウスのケリー報道官はロイターの取材で、部分的避難の報道に関する質問に対し「国務省は定期的に海外に駐在する米職員の調査を行っており、今回の決定は最近の調査の結果として下された」と述べたが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。

英海事当局は11日、中東の緊張の高まりが軍事活動のエスカレートにつながり、重要な航路に影響を及ぼす恐れがあると警告。船舶に対し、イランに接するペルシャ湾、オマーン湾、ホルムズ海峡を航行する際には注意するよう呼びかけた。

英外務省は米国の措置を受け、状況を監視しており、イラクの英国大使館を継続的に監視していくと述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イスラエルのイラン攻撃「あり得る」 数

ビジネス

ゴールドマン、米景気後退確率30%に引き下げ 関税

ビジネス

米政府、現時点でボーイング787の運航停止命じず 

ワールド

トランプ氏、イラン核問題の外交的解決に引き続きコミ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    【動画あり】242人を乗せたエア・インディア機が離陸…
  • 7
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 8
    【クイズ】今日は満月...6月の満月が「ストロベリー…
  • 9
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中