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ケネディ氏のCDC諮問委委員解任、ワクチンへの信頼損なう=専門家

2025年06月11日(水)11時23分

 ケネディ米厚生長官が、疾病対策センター(CDC)の外部の専門家からなる予防接種実施諮問委員会(ACIP)の委員全員を解任したことは、ワクチンへの信頼を損なう行為で、せっかく予防が可能な感染症の脅威に国民をさらしてしまう恐れがある――。写真は、ワクチンの追加接種を受ける女性。2023年1月、タイで撮影(2025年 ロイター/Athit Perawongmetha)

[シカゴ 10日 ロイター] - ケネディ米厚生長官が、疾病対策センター(CDC)の外部の専門家からなる予防接種実施諮問委員会(ACIP)の委員全員を解任したことは、ワクチンへの信頼を損なう行為で、せっかく予防が可能な感染症の脅威に国民をさらしてしまう恐れがある――。こうした見解を公衆衛生の専門家らが9日、明らかにした。

ワクチンに対し長らく懐疑的な発言をしてきたことで知られるケネディ氏は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿で「ワクチン科学に対する国民の信頼を回復するために」ACIPの委員17人全員を解任すると述べた。

米小児科学会(AAP)感染症委員会の委員長を務めるショーン・オリアリー博士は「これによって人命が失われることを恐れている。ケネディ氏が個人としてワクチンに対する不信感を誰よりも植え付けていることを考えると、同氏の信頼回復のために(委員解任を)行うという発言は独特の皮肉だ」との見解を表明した。

厚生省報道官は、同省は公衆衛生、エビデンスに基づく医療、ワクチン科学に対する国民の信頼回復を優先していると説明した。

ACIP委員全員の解任は、2025─26年の追加接種用の新型コロナウイルスワクチンを含む多数の決定について、委員が意見を述べて投票する公開会議開催の数週間前に行なわれた。

厚生省は、会議は予定通り6月25─27日に開催するとしているが、誰が委員を務め、その利害の対立について審査方法をどうするのかは不明。交代する新しい委員を現在検討中だという。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は「ワクチン専門家委員の一掃は、信頼を築くことではなく、信頼を打ち砕くことだ。さらに悪いことに、イデオロギーが証拠よりも、政治が公衆衛生よりも重要だという恐ろしいメッセージを送ることになる」と非難する声明を出した。

米医師会は10日、この解任について上院の調査を求める緊急決議案を可決した。またケネディ氏に対して、ACIPに関する最近の変更措置を直ちに撤回するよう要請する書簡を送付した。

ロイター
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