ニュース速報
ワールド

IAEA理事会、イラン非難決議採択 イランは対抗措置通告

2025年06月13日(金)00時54分

 6月12日、国際原子力機関(IAEA)は定例理事会で、イランが核不拡散義務に違反しているとして同国を非難する決議を採択した。写真はIAEAのロゴ。2021年6月、ウィーンで撮影(2025年 ロイター/Leonhard Foeger)

[ウィーン/ドバイ 12日 ロイター] - 国際原子力機関(IAEA)は12日の定例理事会で、イランが核不拡散義務に違反しているとして同国を非難する決議を採択した。これに対しイランは対抗措置を発表し、中東情勢の緊張が高まっている。

決議は米英仏独が提出した。理事会に出席した外交筋によると、賛成19カ国、棄権11カ国、反対3カ国(ロシア、中国、ブルキナファソ)で採択された。

IAEAは5月31日に加盟国に送付した報告書で、イランが未申告の核施設について、タイムリーに十分な説明をしておらず、IAEAとの保障措置協定の下で同国が負う義務を順守していないと指摘していた。

IAEA理事会がイランの核不拡散義務違反を正式に認定するのは約20年ぶり。これにより国連安全保障理事会への報告の可能性が高まっている。

IAEA当局者は、イランが対抗措置として新たなウラン濃縮施設を開設する計画を通告してきたと明らかにした。イランは施設の場所など、それ以上の詳細は明らかにしていないという。

イラン国営テレビは、これはIAEAの決議を受けて講じられた複数の措置の一つだと報じた。

イラン原子力庁のカマルバンディ報道官は国営テレビに対し、イランは2つの対抗措置をIAEAに通告したと述べた。同国中部フォルドウのウラン濃縮施設の遠心分離機を第1世代から第6世代に改良し、「濃縮ウランの生産を大幅に増加させる」計画がそのうちの一つだと説明した。

オマーンのバドル外相は12日、イランの核開発問題を巡る米イラン高官による6回目の協議が15日にオマーンで開催されると発表した。

イスラエルのメディアによると、イスラエルのデルメル戦略問題相と対外特務機関モサドのバルネア長官が米国とイランの協議に先立ちオマーンを訪問し、トランプ米政権のウィトコフ中東担当特使と会談する。イスラエルは会談で自国の立場を改めて米国に伝えるとみられる。

イラン国営メディアによると、イランのアラグチ外相は、IAEAが決議を採択したことで15日に予定されている米国との協議は「一段と複雑になる」と指摘。「われわれはイラン国民の権利を守るため、オマーンでの協議に参加する」と述べた。

IAEAの決議採択を受け、イスラエル外務省は、イランは核不拡散条約(NPT)を損ない、地域、国際的な安全に差し迫った脅威をもたらしているとの見解を示した。イランはNPTに署名しているが、イスラエルは署名していない。

米国はイスラエルがイランに対する軍事行動を起こす可能性を懸念。米国の情報機関によると、イスラエルはイランの核施設を攻撃する準備を進めている。ただ、米当局者はイスラエルはまだ最終決定を下していないとの見方を示している。

トランプ米大統領は、イランとの核協議で合意が得られなければイランを攻撃すると警告。国営メディアによると、イランのペゼシュキアン大統領は12日、イランの核施設が爆撃で破壊されても再建すると表明した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英国、現時点でイスラエル軍事支援せず イラン報復攻

ビジネス

原油高が日本経済に及ぼす影響、高い緊張感持ち注視=

ビジネス

くら寿司の中間決算、48.5%営業減益 コメ価格や

ビジネス

日経平均は続落、中東情勢緊迫で一時600円超安 円
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    【動画あり】242人を乗せたエア・インディア機が離陸…
  • 7
    【クイズ】今日は満月...6月の満月が「ストロベリー…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 10
    ゴミ、糞便、病原菌、死体、犯罪組織...米政権の「密…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中