トランプ関税差し止め、米裁判所「大統領の権限逸脱」 政権は控訴

5月28日、米連邦裁判所はトランプ大統領の「解放の日」関税を差し止めた。写真は相互関税措置について発表するトランプ氏とラトニック商務長官。4月、ワシントンのホワイトハウスで撮影(2025年 ロイター/Carlos Barria)
By Dietrich Knauth Daniel Wiessner
[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米国際貿易裁判所は28日、輸入品に全面的に課税することは大統領の権限を逸脱しているとして、トランプ大統領が発動した一連の関税の大部分を差し止めた。
米国憲法は議会に他国との通商を規制する独占的な権限を与えており、米経済を守る大統領の緊急権限によってこれが覆されることはないとした。
3人の判事はトランプ氏が1月以降に出した包括的な関税措置に恒久的差し止め命令を下した。決定文書では「裁判所は大統領が関税を活用することの賢明さや有効性については論じない」とした上で、「その活用が許されないのは、賢明でないとか効果がないからではなく、 連邦法がそれを許さないためだ」と述べた。
裁判所はまた、トランプ政権に対し、10日以内に今回の恒久的差し止めを反映した新たな行政命令を出すよう命じた。
トランプ政権はこれを受け、直ちに控訴した。
裁判所は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置すべてを即時無効とした。同法は国家非常事態に際した「普通ではない異常な」脅威に対処するものとなっている。
別の法律に基づいてトランプ氏が発動した自動車・鉄鋼・アルミニウム関税については、裁判所は判断を求められていない。
<「貿易赤字は国家非常事態」>
ホワイトハウスのデサイ報道官は「(貿易赤字は)国家非常事態であり、米国のコミュニティーを破壊し、労働者を置き去りにし、防衛産業基盤を弱体化させている。この事実は裁判所も異議を唱えなかった」とし「選挙で選ばれていない裁判官が国家非常事態への適切な対応を決めるべきではない」と表明した。
金融市場は裁判所の判断を歓迎。ドルが買われ、米国株先物やアジア株が値上がりした。
この判断は2件の訴訟で下された。1件は超党派のリバティ・ジャスティス・センターが関税対象国から製品を輸入している米国の中小企業5社を代表して起こした訴訟。もう1件は米国内13州が訴えていた。
関税を巡り、少なくとも5件の訴訟が係争中となっている。
ミラー大統領次席補佐官は裁判所を非難し、「司法クーデターは制御不能だ」とソーシャルメディアに投稿した。
オレゴン州の訴訟を主導している民主党のダン・レイフィールド司法長官は、トランプ氏の関税は違法かつ無謀で、経済にとって壊滅的だと指摘。「今回の判断はわれわれの法律が重要であり、貿易に関する決定は大統領の気まぐれで行われるべきではないことを再確認するものだ」と述べた。
トランプ大統領は、IEEPAに基づき、関税を導入する広範な権限を持つと主張している。
トランプ氏は4月2日、貿易赤字は国家非常事態だとし、全ての輸入品に一律10%の関税を課すことを正当化。米国が抱える貿易赤字が大きい国、特に中国に対してはより高い税率を課した。
これらの国・地域別の関税のほとんどは1週間後に一時停止され、各国が通商協議を行っている。