カラフルは恥ずかしい? ベージュとグレーに逃げ込む「センスある風」な現代人
Is the World Losing Its Love of Color? Experts Weigh In

なぜ街から「色」が消えたのか? SNS時代に広がる「無彩色」ブームの正体(写真はイメージです) 后莲 冯-Unsplash
<グレー、ベージュ、白、黒──世界はなぜこんなにも「地味」になったのか。ラグジュアリーブランドから家具、ファッション、そしてSNSに至るまで、色の消失が進んでいる>
ラグジュアリーブランドからテック製品、不動産の内覧演出、そしてファッションに至るまで、ある静かなトレンドが世界中の業界を席巻している──それは「無彩色」への傾倒だ。
グレー、ベージュ、白、黒。かつては赤や緑、青など鮮やかな色が主流だったデザインの世界で、今や落ち着いたニュートラルカラーがマーケティングやビジュアルの共通言語になりつつある。これは単なる美的な変化ではなく、心理的・文化的、そして現代の生き方を浮き彫りにする現象だと専門家は語る。
「経済の混乱、気候不安、デジタル過多といった不確実な時代において、無彩色は心の安定とコントロール感を与えてくれるんです」と、カンターやアディティア・ビルラといった企業で20年の経験を持つ行動研究者ゴマシー・ラクシュミナラヤナン氏は本誌に語った。「視覚的な『ホワイトノイズ』として機能し、心理的な安心感をもたらし、環境をシンプルにしてくれるんです」
特にグレーを中心とした「無彩色志向」の広がりは、単なる好みの変化を超えて、社会全体の不安感のバロメーターであり、「デジタル時代の自分演出」を映し出す鏡だと同氏は述べる。
かつて高級ブランドの専売特許だったミニマルな美学は、今や消費財からインテリアまであらゆる分野に広がり、「秩序・安心・理想」を象徴するものとなっている。
この文化的な変化が注目を集めたのは、Instagramユーザー@das.archiveeが投稿した一つの比較画像だった。そこには、過去の車・家・ファッション・映画に見られたカラフルなパレットと、現代のモノクロで冷たいトーンのビジュアルが並べられていた。
投稿のキャプションでは、イギリスのサイエンス・ミュージアムの7000点以上の展示品を分析した2020年の研究にも言及。1800年代以降、消費財の色彩は一貫して減少し続け、20世紀に入ってその傾向は加速。大量生産とコスト効率のために、色の均一化が進んだという。
「2020年時点で、グレーが新製品における最も一般的な色になっていた」と投稿では指摘されている。