ニュース速報
ワールド

中国、米に最大15%の報復関税 グーグル独禁調査や輸出規制も

2025年02月04日(火)20時09分

中国財政省は2月4日、米国の対中国追加関税への対抗措置として、米国からの輸入品に2月10日から最大15%の追加関税を課すと発表した。写真は江蘇省の連雲港。チャイナ・デーリー提供(2025年 ロイター)

[ワシントン/北京 4日 ロイター] - 中国は4日、米国の対中国追加関税への対抗措置として、米国からの輸入品に2月10日から最大15%の追加関税を課すと発表した。

トランプ米大統領は3日、メキシコとカナダに対する関税の発動を土壇場で見合わせ1カ月の猶予期間を設定した。しかし、中国にはそうした対応を取らず、4日0501GMT(日本時間午後2時01分)に追加関税を発動した。

中国の発表はその数分後。財政省は米国産の石炭と液化天然ガス(LNG)に15%、原油、農機具、一部の商用車・乗用車に10%の関税を課すと発表した。

キャタピラーや農機メーカー、ディアなどが影響を受ける。

テスラにも影響が及ぶ可能性がある。中国市場への投入を目指し当局の認可申請中の電動ピックアップ「サイバートラック」が電動トラックに区分された場合、10%の追加関税が課せられる。

<グーグルに独禁調査、重要鉱物の輸出規制>

このほか、対抗措置とみられる発表が相次いだ。

独占禁止当局の国家市場監督管理総局(SAMR)は、米アルファベット傘下グーグルが中国の独占禁止法に違反した疑いがあり調査を開始すると発表した。調査の詳細や、何が違反に当たるかなどは明らかにしていない。グーグルは中国で検索サービスを提供しておらず、中国事業の収入は全体の1%程度に過ぎない。

商務省は、「カルバン・クライン」などのブランドを保有するPVHコープと米バイオテクノロジー企業イルミナを「信頼できない企業リスト」に掲載したことを明らかにした。2社が中国企業に対し「差別的」な措置を取り、中国企業の正当な権利や利益を損ねたと説明した。

商務省と税関当局は「国家安全保障上の利益を保護」するためとして、タングステン、テルル、モリブデン、ビスマス、インジウムの輸出規制を実施すると発表した。

キャピタル・エコノミクスはノートで、中国の一連の措置は「必要なら米国企業を標的にする意向があるという警告」だと指摘した。ただ中国が矛を収める選択肢はなおあり、追加関税が延期ないし撤回されたり、グーグルへの調査が制裁措置なく終了する可能性もある」と述べた。

<米国との交渉へ時間稼ぎか>

中国の対米追加関税は米国と異なり、対象を絞っている。対象となった米国産原油は依存度が低く、昨年の原油輸入に占める割合はわずか1.7%、約60億ドルだった。LNGも5%強にとどまる。

追加関税の発動日は10日。習中国指導部は、その間に米国と交渉し妥協を探る可能性がある。ホワイトハウスの報道官は、トランプ氏が習近平国家主席と会談するのは週内になると述べている。

トランプ氏は3日、記者団に対し、対中関税について、米中貿易関係均衡化に向けた取り組みの「開始の一撃」と説明。「中国が合成麻薬フェンタニルの米国への流入を止めることを期待しているが、もし止めなければ関税は大幅に引き上げられる」と述べた。同時に「中国は(この問題に)対処するだろう」とも語った。

オックスフォード・エコノミクスは中国の経済成長予測を引き下げ、「貿易戦争はまだ初期段階にあるため、追加関税が課される可能性は高い」との見方を示した。

ナティクシス(香港)のシニアエコノミスト、ゲイリー・ウン氏は「カナダやメキシコとは異なり、中国がトランプ氏の経済的・政治的要求に同意するのは明らかに難しい。早期合意に対するこれまでの市場の楽観論は依然として不確実だ」と指摘。

「たとえ両国が一部の問題で合意できたとしても、関税が繰り返し手段として使われる可能性があり、それが今年の市場変動の主因となる可能性がある」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、来週訪米 トランプ氏とガザ・イラン

ビジネス

1.20ドルまでのユーロ高見過ごせる、それ以上は複

ビジネス

関税とユーロ高、「10%」が輸出への影響の目安=ラ

ビジネス

アングル:アフリカに賭ける中国自動車メーカー、欧米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 6
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 9
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中